スポーツクライミング 競技別解説
壁に対する四つ足歩行
クライミングは手でホールドにつかまるイメージがありますが、実際には「足で上がる」競技です。左右両手足のいずれか3所でホールドを保持し、身体を安定させて壁を登ります。スピード種目では、身体を壁に正対させて走り上がるイメージです。体幹のトランスフォームも重要な要素です。体幹を変形させて手足のバランスを拮抗させることで力が分散できる上、実際の手足の長さを変えることもできます。具体的には、肋骨と肩甲帯を動かすことで、胴体の幅分を腕の長さとして使うことができるということです。
クライミングは知的ゲームでもありますから、絶対的に届かないホールドに届かせるために、体幹をどんなふうにトランスフォームするか、また、どんなライン取りをするかなどを考え判断するのも、競技の醍醐味と言えるでしょう。
競技の起源
1940年代後半から1980年にかけて、当時のソ連が自然の岩場でスピード種目の競技会を開催したのが始まりとされている。その後、イタリアやフランスでも競技会が活発化。1990年代になると、世界選手権やワールドカップがスタートした。1990年代後半にはボルダリングも採用され、現在の3種目(リード、ボルダリング、スピード)となった。
可変的な出力を生み出すトランスフォーム
遠いホールドに届かせるためには、体幹をどんなふうにトランスフォームするかがカギになる。ホールドを蹴ることで生まれるジャンプのような力も利用する必要がある。また、壁の角度が変わると、たとえば左手は外に張り、右手は下に張らないと支えられないという状況や、ホールドに手を押しつける、横に引っ張るなど、可変的な出力をしながら身体を支持する場合もあります。このとき重要なのはやはり体幹部のトランスフォーム能力。体幹部の変形性を十二分に発揮させることがポイントです。
Aタイプ、Bタイプのホールドの押さえ方
ホールドにかけた指先の使い方も、タイプによって違う。Aタイプは爪の先から押さえることで安定し、Bタイプは指紋の縁から指腹で押さえると安定する。
【A】爪の先を使う
【B】指の腹を使う
【書誌情報】
『廣戸聡一 ブレインノート 脳と骨格で解く人体理論大全』
著者:廣戸聡一
「本来の自分の身体の動きと理屈を知り、身体だけでなく精神的な部分との兼ね合いの中で、“いかにして昨日の自分を超えるか”という壮大なテーマを、人体理論の大家であり、日本スポーツ・武道界の救世主と呼ぶに相応しい、廣戸聡一が、自身の経験と頭脳のすべてを注ぎ込んで著す最強最高の身体理論バイブル。四半世紀でのべ500,000人の臨床施術により、多くのトップアスリート、チーム、指導者、ドクターとの関わりの中で行き着いたトレーニング&コンディショニング理論の集大成、ここに完成。オリンピック競技を含む全52種目を個別にも論及、紐解いた、すべてのアスリート、指導者、スポーツファン必携の書!
公開日:2021.07.20