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物理でわかる背が高く痩せた選手が走り高跳びに向く理由【物理でわかるスポーツの話】

Text:望月修

重い人は大きな力を必要とする

 支柱に掛けわたしたバーの長さ4mの走り高跳びを考えます。

 走り高跳びの選手は背が高く脚の長さも驚異的であり、また女子選手は美人ぞろいというわけで見惚れてしまう競技です。ただし、例として挙げるのは男子。30°の角度で進入し、地面から測った高さが2.45m(1993年世界記録。ハビエル・ソトマヨル/キューバ)にあるバーの中央位置に、最大高さymaxになるような放物線を描いて跳ぶ設定とします。

 まず、助走で地面から重心の運び80cmの高さを地面と平行に進み、着地マットから75cm離れたところから跳び上がります。このときの重心の軌道は、高さymax=2.45+0.15–0.8=1.8mです。着地をxmax=3mのところとすると、踏切り速度は水平方向にu₀=2.48m/s、垂直上向きにv₀=5.94m/sの速度となります。この放物線はバーの中央の上15cmの高さに重心が通るため、背中がすれすれ越すという計算が成り立ちます。

 体重70kgfの選手が0.3秒で跳び上がるときの力は、上向きの速度v₀=5.94m/sを生む力です。加速度は(5.94-0)÷0.3=19.8m/s²ですから、これに質量70kgを掛けるとF=70×19.8=1386Nと求められます。この力は約141kgfの錘(おもり)を持ち上げる力に相当します。およそ体重の2倍の力で地面を垂直に蹴ることによって、物理的には世界記録を跳ぶことができるのです。

 空気抵抗を考えない自由落下の式からわかるように、放物線運動の軌跡を表すのに質量は関係ありません。したがって、放物運動を仮定するにあたっては体重が軽かろうが重かろうが先に記した跳び上がり速度v₀=5.94m/sを出せればバーを越えられるのです。

 その速度を出すために必要な力をF=m(v-0)/Δtと表せます。力は質量に比例します。質量を体重と言い換えれば、体重の重い人は大きな力を必要とし、軽ければその逆の関係となります。ただし、自分の体重の2倍の力という表現は変わらないので、重い人は大きな力を必要とします。よって背が高く痩せた選手が走り高跳びに向いているというわけです。

【❶重心の軌跡は放物線】


【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 物理でわかるスポーツの話』
著:望月修

シリーズ累計発行部数130万部突破!「100メートル走で人類の限界は9秒21?」「サッカーでコーナーキックをうまく決めるヘディングの角度とは?」「巨漢力士はテコの原理で持ち上げろ!」「走り幅跳びで観客の手拍子は果たしてプラスに働くのか?」「バスケで3点シュートを決める方法」「スキージャンプ、究極のムササビ飛行?」「理想的な泳ぎ方とは?」ーー全44のスポーツ、運動を物理で読み解く。スポーツの見方が変わる!記録がのびる、勝てる方法がわかる!そして観戦が100倍楽しくなる1冊!

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