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私たちの体はどうやってウイルスと戦うの?免疫システムのしくみとは【図解 病理学の話】

Text:志賀貢

前線部隊と後続部隊が協力して攻撃

体の免疫システムには、どのような敵に対しても同じような機構で防衛する「自然免疫」と敵の性格を知り、その敵に対して専門的な武器で防御にあたる「獲得免疫」と呼ばれる2つのシステムがあります。

どんな敵に対しても素早く反応してやっつける自然免疫は、いわば「前線防衛システム」であり、私たちが生まれつき備えているものです。

それに対して、以前の敵を覚えておいて、同じ敵が再度現れたときに専用の武器を用いてやっつける獲得免疫は、主に初期防衛システムで撃退できなかったときに働く、「後続防衛システム」といえます。

獲得免疫の中には、「抗原(敵)」に対して専用の「抗体」という武器をつくって対応する「液性免疫」と、敵を覚えているリンパ球が攻撃殺傷にあたる「細胞性免疫」があります。

細胞性免疫にはT細胞があり、液性免疫にはB細胞があります。この2つの免疫システムが状況に応じて的確に働き、外敵から身を守っているのです。

リンパ球のひとつであるT細胞には「ヘルパーT細胞」「キラーT細胞」「サプレッサーT細胞」の3種類があります。

キラーT細胞は、ウイルス感染細胞やがん細胞を殺傷し排除する細胞性免疫に関わります。ヘルパーT細胞は抗原刺激に応答して、他の免疫細胞の働きを調節する司令塔の役割をします。

B細胞は抗体という特殊な武器を産生する細胞です。抗体は特定の敵だけを無力化する〝矢〞もしくは〝ミサイル〞のようなものです。

特定の相手にしか作用せず、周囲を巻き込むことはありません。しかし、このような優れた防御システムも、「老化」には抗あらがえません。

成熟期以降に加齢とともに臓器の機能が低下し、恒常性の維持が難しくなり、死にいたる過程を「老化」といいます。恒常性とは、外部の環境が変化しても生体内部の体温、血圧及び化学的内容物などが一定に保たれている状態です。

T細胞を成熟・分化させる免疫器官の「胸腺」は、10歳前後には最大35gありますが、年齢とともに脂肪組織に置き換えられ、最終的にはわずかに散在するだけになり、この結果、リンパ球(T・B細胞)の機能低下がおこり、悪性腫瘍の発生を抑制する力も低下してしまうのです。

免疫システムのしくみ『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ

図解シリーズは、文章と分かりやすい図で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。

ピロリ菌の感染源『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!

気になる中身を少しだけご紹介!消化管のおもな病気と症状とは?

放っておくとがんになる炎症とポリープ

消化管とは、口腔から始まり食道、胃、小腸、大腸を経て肛門までの食物の通路のことをいいます。食道から胃までを上部消化管といい、食道にみられる病気で、近年増えているのが食道の粘膜が炎症をおこした「食道炎」です。その症状は、胸部の痛み、下障害(飲み込みにくい)、胸やけ、 香酸、などがあります。食道炎の中で多いのが「逆流性食道炎」で、これまでは高齢者に多くみられましたが、最近では若い人にも増えてきました。放置すると潰瘍に進行し、食道がんのリスクも高くなります。便秘が原因のひとつとされており、食生活にも注意が必要です。肝硬変患者の3大死因のひとつとなっているのが「食道静脈瘤」です(そのほかは肝がん、肝不全)。食道粘膜の下層にある静脈が太くなり瘤のようになった状態です。これは「門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)」が原因となって発症します。「門脈」とは、腸で吸収された栄養素を肝臓に送り込む血管のことで、門脈を通して取り込んだ栄養は肝臓で処理されて全身に運ばれます。

しかし、肝硬変になると血液が流れにくくなり、それまで門脈を流れていた血液は、本来のルートからはずれて食道の血管を流れるようになります。食道への血流が多くなる結果、血管が船のようにふくれあがって食道静脈瘤になります。手当が遅れると瘤が破れ大出血してショック死をすることもある怖い病気です。胃の粘膜の炎症でおきる「胃炎」は、急性胃炎と慢性胃炎に分けられ、急性胃炎は喫煙、暴飲暴食、アルコール飲酒、ストレスが原因のものと、感染性(ブドウ球菌、アニサキス)があります。慢性胃炎はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、や加齢などの複数の因子が絡み合っているとされます。胃の粘膜にポリープができる「胃ポリープ」には、放置しても問題のない「胃底腺ポリープ」、比較的ピロリ菌が下人でなることが多い「過形成性ポリープ」、正常組織よりがんを発症しやすい前がん病変と考えられている「胃腺腫ポリープ」などがあります。

消化官のおもな病気

口腔

歯周病・口の中の腫瘍・嚥下障害など

食道

食道炎・食道静脈瘤など

胃炎・胃ポリープなど

十二指腸

十二指腸潰瘍・十二指腸炎

小腸

クローン病・小腸腫瘍など

大腸

大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎など

肛門

痔核疾患・痔ろう

消化管のおもな病気『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

★生命の設計図といわれるDNA
★細胞には2通りの死に方がある!?
★貧血はどうして起きるの?
★がんって本当に遺伝するの?

などなど気になるタイトルが目白押し!

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「病理学」について切りこんだした一冊。病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」です。コロナウイルスが蔓延する中で、人はどのようにして病気になるのかが、改めて注目されています。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊です。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』
著:志賀 貢

病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊。細胞、血液、がんーー生命の不思議と病気の原因を、面白くわかりやすく探る!

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