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がんとは悪性腫瘍の総称をいう!がん細胞の特徴とは?【図解 病理学の話】

Text:志賀貢

がん細胞は増殖を続け止まらない!

全死因の中で1位ということで、いちばん恐れられている病気は何といっても「がん」でしょう。

がんの語源は英語の「cancer」でカニという意味です。ギリシャ時代のヒポクラテスの著書にも登場するといいますから、見た目や触った感じから、概念的な意味でつけられたのではないでしょうか。

では、ひらがなの「がん」と漢字の「癌」では違うのでしょうか。ひらがなのがんはもともと学術用語の「癌」が難しく、固い印象を持つので和らげた言い方です。

がんは「悪性腫瘍」あるいは「悪性新生物」を総称します。肉腫・白血病・悪性リンパ腫などすべてを含みます。

腫瘍とは、何らかの原因で細胞が傷ついて塊になり増殖したもので、悪性のものを「がん(悪性腫瘍)」と呼ます。がんの特徴は、「体の細胞が制御を受けずに勝手に、限りなく増殖を続けるもの」です。

さらに、周囲の臓器や組織に食い込むように浸潤し、ほかの場所に転移して増殖を続ける性格を持ちます。

上皮以外の組織(非上皮性細胞)から発生するがんを「肉腫(サルコーマ)」と呼んでいます。非常に発生頻度は低い稀まれながんですが、年齢層が広く全身どこからでも発症します。

ほかに造血器(骨髄、リンパ)から発生するがんもあります。このように区別する理由は、発生する部位によって性格や効果的な治療方法が異なるからです。

上皮組織というのは、体の表面や消化管などの内腔の表面を覆う細胞のことです。ただ、脳にできる腫瘍は「脳腫瘍」で、慣例的にがんとも肉腫ともいいません。

がんは悪性腫瘍の総称

悪性新生物とは悪性腫瘍と同じ「がん」を意味しますが、死因統計の分野で使われます。英語でneoplasia、neoplasmなどといい、neoは新しく、plasiaは成長、plasmは形成されたもの、という意味があるので、新しくできて育ったというのが名の由来です。新生物のほうが腫瘍よりも幅広い疾患概念を持つということでしょう。

がん細胞の特徴

アポトーシスを無視、異常増殖

がん細胞は、勝手に増殖を続けて止まらない(32ページを参照)。

浸潤と移転

周囲に染み出るように広がる(浸潤)、体のあちこちに散って(移転)、がん組織を拡大する。

栄養の過剰消化

ほかの正常組織の栄養分を奪って、体を衰弱させる。

無限の分裂能力

テロメラーゼという酵素が働き、細胞が無限分裂をおこす(38ページを参照)。

がんは悪性腫瘍の総称『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ

図解シリーズは、文章と分かりやすい図で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。

ピロリ菌の感染源『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

図解シリーズには、健康・実用だけではなく大人の学びなおしにピッタリな教養のテーマも満載。さくっと読めてしまうのに、しっかりとした専門家の知識を身につけることができるのが最大の魅力です!

気になる中身を少しだけご紹介!消化管のおもな病気と症状とは?

放っておくとがんになる炎症とポリープ

消化管とは、口腔から始まり食道、胃、小腸、大腸を経て肛門までの食物の通路のことをいいます。食道から胃までを上部消化管といい、食道にみられる病気で、近年増えているのが食道の粘膜が炎症をおこした「食道炎」です。その症状は、胸部の痛み、下障害(飲み込みにくい)、胸やけ、 香酸、などがあります。食道炎の中で多いのが「逆流性食道炎」で、これまでは高齢者に多くみられましたが、最近では若い人にも増えてきました。放置すると潰瘍に進行し、食道がんのリスクも高くなります。便秘が原因のひとつとされており、食生活にも注意が必要です。肝硬変患者の3大死因のひとつとなっているのが「食道静脈瘤」です(そのほかは肝がん、肝不全)。食道粘膜の下層にある静脈が太くなり瘤のようになった状態です。これは「門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)」が原因となって発症します。「門脈」とは、腸で吸収された栄養素を肝臓に送り込む血管のことで、門脈を通して取り込んだ栄養は肝臓で処理されて全身に運ばれます。

しかし、肝硬変になると血液が流れにくくなり、それまで門脈を流れていた血液は、本来のルートからはずれて食道の血管を流れるようになります。食道への血流が多くなる結果、血管が船のようにふくれあがって食道静脈瘤になります。手当が遅れると瘤が破れ大出血してショック死をすることもある怖い病気です。胃の粘膜の炎症でおきる「胃炎」は、急性胃炎と慢性胃炎に分けられ、急性胃炎は喫煙、暴飲暴食、アルコール飲酒、ストレスが原因のものと、感染性(ブドウ球菌、アニサキス)があります。慢性胃炎はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、や加齢などの複数の因子が絡み合っているとされます。胃の粘膜にポリープができる「胃ポリープ」には、放置しても問題のない「胃底腺ポリープ」、比較的ピロリ菌が下人でなることが多い「過形成性ポリープ」、正常組織よりがんを発症しやすい前がん病変と考えられている「胃腺腫ポリープ」などがあります。

消化官のおもな病気

口腔

歯周病・口の中の腫瘍・嚥下障害など

食道

食道炎・食道静脈瘤など

胃炎・胃ポリープなど

十二指腸

十二指腸潰瘍・十二指腸炎

小腸

クローン病・小腸腫瘍など

大腸

大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎など

肛門

痔核疾患・痔ろう

消化管のおもな病気『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

★生命の設計図といわれるDNA
★細胞には2通りの死に方がある!?
★貧血はどうして起きるの?
★がんって本当に遺伝するの?

などなど気になるタイトルが目白押し!

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「病理学」について切りこんだした一冊。病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」です。コロナウイルスが蔓延する中で、人はどのようにして病気になるのかが、改めて注目されています。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊です。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』
著:志賀 貢

病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊。細胞、血液、がんーー生命の不思議と病気の原因を、面白くわかりやすく探る!

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