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IARCも推奨する胃がんになる確率をぐっと下げる予防法とは!?【図解 病理学の話】

Text:志賀貢

感染源は飲み水や食物から

胃がんは、胃の壁の内側を覆う粘膜の細胞が何らかの原因でがん細胞になり、増えていくことで発症します。

この変化には「ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)」という細菌が大きく関わっています。世界保健機関(WHO)の外部組織である国際がん研究機関(IARC)は、発がん性のリスクを5段階に分類しています。

「人に対する発がん性がある」と認定されたグループ1がいちばん発がん性の高いグループです。例えば、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルスの感染、アフラトキシン、いくつかの抗がん剤、放射線などと並んで、1994年には「ピロリ菌」の感染もグループ1に分類されています。

ピロリ菌は人の胃の中に住みつく細菌で、ウレアーゼという酵素により胃内にアンモニアを発生させ、長くいると胃粘膜の表面に傷をつけて慢性胃炎や十二指腸潰瘍、胃がんの原因となります。

ピロリ菌は子どもの頃(5歳以下の幼児期)に感染し、一度感染すると多くの場合、除菌しない限り取り除くことはできません。ピロリ菌の感染原因は大部分が飲み水や食物を通じて、人の口から入るとされています。

しかし、ピロリ菌が除菌可能であることは、よく知られるようになりました。一般的には、ピロリ菌などの微生物の成長を阻止する抗生物質2種類と、その抗生物質が効きやすくなるように胃の酸性度を抑える薬の3種類を服用します。

これによって、胃がんになる率をかなり下げることができると考えられています。2014年には、IARCも胃がんの予防にはピロリ菌の除去を推奨するようになりました。

ピロリ菌の感染源

ピロリ菌とは胃の表層を覆う粘膜の中に住みつき、胃潰瘍や胃がんの発症に関わっている。大部分が水や食物を通じ、口から体内に入る。5歳以下の幼児に多い。

ピロリ菌の感染源『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

シリーズ累計250万部を突破した「図解シリーズ」の読みやすさ

図解シリーズは、文章と分かりやすい図で解説という形で構成されているので、本が苦手な人にも理解しやすい内容です。

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気になる中身を少しだけご紹介!消化管のおもな病気と症状とは?

放っておくとがんになる炎症とポリープ

消化管とは、口腔から始まり食道、胃、小腸、大腸を経て肛門までの食物の通路のことをいいます。食道から胃までを上部消化管といい、食道にみられる病気で、近年増えているのが食道の粘膜が炎症をおこした「食道炎」です。その症状は、胸部の痛み、下障害(飲み込みにくい)、胸やけ、 香酸、などがあります。食道炎の中で多いのが「逆流性食道炎」で、これまでは高齢者に多くみられましたが、最近では若い人にも増えてきました。放置すると潰瘍に進行し、食道がんのリスクも高くなります。便秘が原因のひとつとされており、食生活にも注意が必要です。肝硬変患者の3大死因のひとつとなっているのが「食道静脈瘤」です(そのほかは肝がん、肝不全)。食道粘膜の下層にある静脈が太くなり瘤のようになった状態です。これは「門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう)」が原因となって発症します。「門脈」とは、腸で吸収された栄養素を肝臓に送り込む血管のことで、門脈を通して取り込んだ栄養は肝臓で処理されて全身に運ばれます。

しかし、肝硬変になると血液が流れにくくなり、それまで門脈を流れていた血液は、本来のルートからはずれて食道の血管を流れるようになります。食道への血流が多くなる結果、血管が船のようにふくれあがって食道静脈瘤になります。手当が遅れると瘤が破れ大出血してショック死をすることもある怖い病気です。胃の粘膜の炎症でおきる「胃炎」は、急性胃炎と慢性胃炎に分けられ、急性胃炎は喫煙、暴飲暴食、アルコール飲酒、ストレスが原因のものと、感染性(ブドウ球菌、アニサキス)があります。慢性胃炎はヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)、や加齢などの複数の因子が絡み合っているとされます。胃の粘膜にポリープができる「胃ポリープ」には、放置しても問題のない「胃底腺ポリープ」、比較的ピロリ菌が下人でなることが多い「過形成性ポリープ」、正常組織よりがんを発症しやすい前がん病変と考えられている「胃腺腫ポリープ」などがあります。

消化官のおもな病気

口腔

歯周病・口の中の腫瘍・嚥下障害など

食道

食道炎・食道静脈瘤など

胃炎・胃ポリープなど

十二指腸

十二指腸潰瘍・十二指腸炎

小腸

クローン病・小腸腫瘍など

大腸

大腸ポリープ・潰瘍性大腸炎など

肛門

痔核疾患・痔ろう

消化管のおもな病気『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』

★生命の設計図といわれるDNA
★細胞には2通りの死に方がある!?
★貧血はどうして起きるの?
★がんって本当に遺伝するの?

などなど気になるタイトルが目白押し!

シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「病理学」について切りこんだした一冊。病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」です。コロナウイルスが蔓延する中で、人はどのようにして病気になるのかが、改めて注目されています。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊です。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 病理学の話』
著:志賀 貢

病理学とは「病(気の)理(ことわり)」の字のごとく、「人間の病気のしくみ」。細胞や血液、代謝や炎症、腫瘍、がん、遺伝子などと、人体のしくみ・器官、食事を含む生活、加齢などさまさまな環境との関連から、「病気」を解明するもの。専門書が多いなか、病気とその原因をわかりやすく図解した、身近な知識となる1冊。細胞、血液、がんーー生命の不思議と病気の原因を、面白くわかりやすく探る!

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