サッカー選手をダイナミックシステムとして理解する
サッカー選手をダイナミックシステムとして理解することによって、サッカーというスポーツが理解でき、トレーニング方法を構築するのにも役立つ。
ダイナミックシステムをサッカー選手に例えて説明すると、私たちの行動は文脈(プレーの状況)や個人のこれまでのサッカー経験値、遺伝的な能力の差異に基づき再構築されるという考え方である。サッカー選手の行動は、プレーの状況や今までのサッカー経験に基づいて、プレーの瞬間、瞬間に現れる様々な要素(ボール、チームメート、相手など)と相互作用しながら再構築(自己組織化)され、その結果、創発が起こり即興プレーとして現れると考えるのがダイナミックシステムである。
プレーをする環境と選手間の相互作用がチームと各選手のパフォーマンスに影響を及ぼす。技術、戦術、フィジカル、メンタルをそれぞれ分割してトレーニングするデカルト主義(精神と身体は全く別の存在であると考える)的な方法では、選手のパフォーマンスの向上には反映されない。
サッカーや選手を分割しないで集団・組織として分析することが重要だ。
フランシスコ・セイルーロは、選手を非常に複雑な構造をしているダイナミックシステムとして考え、その構造を「8つの構造」に分けて、常に8つの構造間の相互作用とフィードバックから選手は構成されていることを提案した。それは「構造化トレ
ーニング」と呼ばれ、FCバルセロナやペップ・グアルディオラが監督をするチームで取り入れられている。
【著名人の言葉】
「選手をダイナミックシステムとして理解する。選手は、非常に複雑な構造をしており、構造間の相互作用とフィードバックによって構成されている。」フランシスコ・セイルーロ(FCバルセロナフィジカルコーチ、大学教授)
●創発とは
創発とはミクロレベルの複雑系において、平衡からほど遠い状態(無作為の事象が増幅される)で、自己組織化(創造的かつ自然発生的な順応志向の振る舞い)が行われた結果、それまで存在しなかった新しい性質を持つ構造が出現し、マクロレベルで新しい秩序が形成されることだ。(マイケル・S・ガザニガ 心理学者)
創発とは、部分の性質の単純な総和にとどまらない性質が、全体として現れることである。局所的な複数の相互作用が複雑に組織化することで、個別の要素の振る舞いからは予測できないようなシステムが構成される。(ウィキペディア)
出典:『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』坂本圭
『ダイヤモンドオフェンス サッカーの新常識 ポジショナルプレー実践法』
著者:坂本圭
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公開日:2021.12.06