スライド・ダウン:クラブの軌道を正しい方向に導く①
●ダウンスウィングではX点は垂直に近い面を動く
テークバックでは、ショルダーラインは水平に近い平面上を動くと、延べました。この動きを見て「肩は水平に回る」という説が出てきたのかもしれません。
でも、ご注意ください。
ショルダーラインが水平に近い平面上を回転するのは、セットアップからトップ・オブ・スウィングまでです。そこからダウンスウィングに入る時、右肩は下がり左肩が上がって、X点は垂直に近い平面を下ります。
多くのゴルファーは、腰も肩も水平に回転すると思っているようですが、じつは違います。テークアップでは肩は水平に回転しますが、トップ・オブ・スウィングからは、肩は垂直に近いタテ回転をします。両肩峰を結んだショルダーラインがヨコ回転していると、方向性は出せないのです。
改めてダウンスウィングの体の動きを細かく説明します。
まずトップ・オブ・スウィングまでいったら、そこからフットワークを使って両ひざをターゲット方向に押し込み骨盤を左にスライドさせます。肋骨が変形し、腕が右体側にくっつくように下りてきます(下のイラスト①)。
下のイラスト②では、肋骨を提灯に見立てて描きましたが、骨盤をほんの少し左にスライドさせた瞬間に胴体の右側が縮んで、その右わき腹に右ひじが下りてくるのです。バームクーヘン状に右体側が窮屈になるのです(イラスト③)。
言い換えると、骨盤の回転力が胸腰移行部でベベルギヤ―(傘歯車)のように働くことで、肋骨上部と肩のラインがタテに回転し、その動きに左腕が同調して腕がタテに振れる、というダウンスウィングの一連の流れができるのです。人間の体には「連鎖性」があります。どこか1つを動かすと他が連動して動く仕組みになっています。それがまさに、スライド・ダウンによって起こるのです。
このときの上体の部分だけを取り出して説明すると、テークバックでショルダーラインが動いた平面は、ダウンスウィングが始まった瞬間、大きく右に傾きます。そのとき右肩は「つの字」を描きます。その動きがシャフトの長さで増幅され、先端にあるクラブヘッドは
一層大きな「つの字」を描きます。それによってシャフトはしなり、ヘッドスピードを上げる原動力になります。
出典:『ゴルフスウィングの真実 ジャストミートを確約するSスウィング』著/佐久間馨
【書誌情報】
『ゴルフスウィングの真実 ジャストミートを確約するSスウィング』
著者:佐久間馨
タイガー・ウッズ、ジャック・ニクラウスなど、プロゴルファーの名選手には共通したクラブの動きがある。その動き分析し、本書の著者が体系づけたスウィングが「Sスウィング」。 本書の構成は「Sスウィングのメカニズム」と「漫画でわかるSスウィングの正体」の2部構成。 第1部では「クラブの動きと体の動き」の視点から、合理的なクラブの振り方を詳細なイラストとわかりやすいテキストを使って解説。アドレスからフィニッシュまでの動きについて、著者独自の理論を展開している。なかでも、「スライド・ダウン」、「ターンアップ」など従来のゴルフ用語にはない、スウィングの動きを表す言葉の解釈は一読の価値あり。 さらに、第2部「漫画でわかるSスウィングの正体」は、ゴルフビギナーがSスウィングを学び、身に付けていくプロセスをストーリー漫画でわかりやすく紹介している。
公開日:2021.12.17