テニスは統計学で勝てる
●松尾衛/理論物理学者
「テニスは、6割のポイントを取れば勝てる!」といわれますよね。ですから、ひとつずつのショットの結果は、そこまで重要ではない。試合全体を、記憶だけでデータ保持するのは相当に大変だと思います。
私は職業柄、データの収集と分析が大好きなので、カメラで撮影して、この場面でミスして、こうやってポイントが取れて……と分析します。こうした分析を行なうと、記憶だけで分析したときとは印象がガラッと変わります。人は感情の動物なので、どうしても派手なショットに心が揺さぶられ、記憶に残りやすい。ですから、正しい確率・統計的な判断は、じっくり映像分析したほうがいいのです。
同じことは対戦相手にも言えて、映像分析で相手を研究して癖をつかめば、やっぱり試合に生かせます。私にも、自分の負け試合を見続けて、ついに上級クラスの方にリベンジできた経験があります。
そうなると、対戦相手の、どこの癖を見抜いておいたほうがいいのか? これがマニュアル化されていると楽だなと思います。そもそも、どこを見ていいのかがわからない。いちばん難しいのがそこで、どういう観点で分析し、相手の癖をタイプ別に分類するのか。例えば、「サービスなら、ここを見ろ」というのがあるといいですね。相手のサービスなら、どこを見れば正確な予測・判断ができるのか、という部分です。
元プロ野球選手の古田敦也さんが、野球の見方の本を出していました。どういうところをプロ選手がこだわっているのか、がわかる本でした。フェデラーの試合などをユーチューブで見られるので、ここを見たら面白いし、そこの観点で見ていると普段のスクールでも生かせるよ、というアドバイスがあるといいなと感じます。そうすると自然と癖の見抜き方とかのヒントにもなりますし、エース以外のショットも割合を占めていることがわかりますし、傾向とか確率・統計的なものがプレーヤーの中に育まれていくと思うのです。
【ポイント】ワンショットや、ワンポイントに一喜一憂しない。試合全体をデータ分析し、自らと対戦相手の良し悪しを客観的に判断することが大切。
『新装版 勝てる!理系なテニス 物理で証明する9割のプレイヤーが間違えている〝その常識〟!』
著者:元オリンピック&日本代表コーチ 田中信弥
理論物理学者 松尾衛
元オリンピック&日本代表テニスコーチと気鋭の物理学者による常識を覆すテニス理論、指南書。5万人超のウィークエンドプレーヤーが納得した現場理論を、理論物理学で証明した、すべてのプレーヤーのテニスを躍進させる書。「サービズは上から下に打つのは間違い」「テニスは不等式でできている」「身体は動かさずに打つ」など、常識破り、型破りな指導法で結果を出し続ける田中コーチの独自のテニス理論を、理学博士の松尾氏が自ら体験で得たプレーを「物理屋」の観点で解説・証明する―――まったく新しいテニスの本!
公開日:2021.09.17
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