時代やニーズに合わせて変化しない建築への疑問
家族の人数はライフステージによって増えたり、減ったりするものです。結婚直後は夫婦ふたりでも、子どもがうまれたり、両親と同居したり、親戚の集まる機会が増えれば、増築を考えます。しかし、やがて子どもが独立すれば広いスペースは必要なく、減築を検討するかもしれません。こうした変化は、会社のような組織、さらには都市全体にも起こります。
メタポリズムは、こうした増減に対応できる、可変性のある建築や都市をつくろうという考え方です。この新しい思想を提案し、中心となって進めたのは日本でした。
発表されたのは1960年に東京で開催された世界デザイン会議です。都市計画家の浅田孝をはじめ、菊竹清訓、黒川紀章、大高正人と、槇文彦といった建築家やデザイナーたちがメンバーとして参加。
具体的には、まず建築物のコアとなるシャフト部分に水道、電気、ガスといったインフラの配管と移動手段である階段とエレベーターを固定します。それ以外の居室や執務スペースといった部分は、そのときどきの収容人数やニーズに応じて適宜増減できる建築が提唱されました。
代表的なものとして、黒川紀章設計の中銀カプセルタワービル、丹下健三設計の静岡新聞・静岡放送東京支社ビル、山梨文化会館などがあります。
メタポリズムのアイコン的存在である中銀カプセルタワービルは、当初はカプセル単位で海や山に出かけられるという構想でした。しかし実現することはなく、限定的な進歩にとどまっています。
その一方で、山梨文化会館は実際に増築や用途変更(新聞印刷部をスタジオに変更)を実施し、構想通りの可変空間として今も息づいています。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』
『建築の話』はこんな人におすすめ!
・世界中の様々な建築に興味がある!
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・お寺や神社の建築について知りたい
以上の方には「図解 建築の話」は大変おすすめな本です。
「うだつが上がらない」は建築からうまれた言葉?
本書、「図解 建築の話」では建築について様々な知識を提供していますが、ここではその中でも日常生活でもなじみのある「うがつが上がらない」という言葉について、ご紹介しましょう。
「うだつの上がらない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。うだつは漢字で「卯建」と書き、日本家屋に見られる設備です。うだつは防火設備だと解説されることがありますが、当初の目的は違いました。
中世から近世にかけての町家の屋根は、多くが板葺きでした。強い風にあおられると、めくれあがってしまいます。これを防ぐため、茅などを束ねて屋根を押さえたのが、うだつの始まりです。そもそも可燃性ですから、防火機能はほとんどなかったと考えられます。江戸時代に入ると、壁が漆喰塗りになり、屋根は瓦になって、町家の防火性は高まりました。しかし、軒裏部分は火が走りやすいので、袖壁を外に出し、漆喰で固め、延焼を防ぐ「袖うだつ」が登場します。
うだつが防火設備から意匠をこらしたものをにかわったわけ
このころ、うだつが防火設備になったのです。火事が多いのは冬ですから、袖うだつは冬に風が吹く側につければこと足ります。しかしそれではバランスが悪いので、厚みの違うものを両サイドにつけるようになりました。よく観察すると、風下側のうだつは薄く、風上側は火に耐えるよう厚く、つくられていることがわかります。
とはいえ、このようなうだつを設置するのにはそれなりの費用がかかります。そこから「うだつの上がっている家は成功している」というイメージが浸透し、「うだつが上がらない」という表現がうまれたようです。そのためか、現在も残っているうだつの多くは、本来の機能とは別にうだつの壁面には細かい装飾や小屋根に意匠を凝らしたものとなっています。
あなたの好奇心をくすぐる建築のトリビアが満載です
只今紹介した「うだつ」という言葉の由来だけでなく、本書では建築の様々な知識を紹介しています。その数実に60個です!以下の5つのパートに分けて紹介をしているため、気になるパートから読むことが可能です。
「①日本の建築は知らないことだらけ」「②こんな目で見ると近・現代建築も面白い」「③寺社はこだわりの世界」「④城・庭が育んだ日本の美意識」「⑤建築を支えた縁の下の力持ち」の5章にわたって、日常生活において切手は切り離せない「建築」の奥深い世界を図解で分かりやすく解説します。
シリーズ累計250万部は伊達じゃない!豊富に使われた図解の圧倒的わかりやすさ
「図解 建築の話」と銘打っているだけあって、図解がふんだんに使われています。
右ページに文章、左ページに図解で解説という形で全頁が構成。
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【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
身近な建物が楽しくなる。ナゾとギモンを一挙解決!屋根の形は、どうやって決まるの? 正面だけが西洋風の看板建築って、どんな構造? うだつが上がらないの、うだつって何? 日本の建築をテーマに、さまざまな建築のナゾを楽しく解き明かします。古民家から、お寺、神社、城、庭、代表的な近・現代建築まで、建築家ならではの視点で、建築物の見方、楽しみ方を図解します。理系の知識がなくても大丈夫。私たちの生活や伝統美など、暮らしの文化に根ざした日本建築のスゴさと面白さがわかります。建築士しか書けない精緻なイラストを満載。60項目で楽しむ建築エンターテインメント本です。
公開日:2022.09.26