おじぎをして見上げると仏界が見えてくる
お寺のお堂に入ると、多くの場合、須弥壇の上に南を向いた仏像が鎮座しています。壇上は仏様の専有空間(内陣)です。わたしたちが入れるのは一段低い床までで、外陣と呼ばれます。
外陣が殺風景な板張りなのに対し、内陣の天井には極彩色の蓮花や金雲とともに仏たちの世界が描かれており、浄土を表しています。
このお堂にも須弥山図が隠れているのがわかるでしょうか。図では海上にそびえる須弥山の南に、人間たちの住む南贍部洲という島が浮かんでいます。お堂正面にある須弥壇を須弥山とすると、礼拝する座布団が南贍部洲にあたるのです。
天井の浄土から仏たちが壇上に降りてくるのを、私たちが迎える、という須弥山図の姿が仏堂の内部に再現されているのです。
僧侶の人たちがするように、座布団に正座しておじぎをしてみましょう。座礼をすると視線は下に向かい、外陣の床が目に入ります。殺風景な板張りは、この世を表したものです。
そこから頭をゆっくり上げていくと須弥壇、つまり須弥山が見え、さらに目線を上げれば壇上の忉利天に達し、迎えに来てくださった仏たちと目を合わせます。ちなみに忉利天は、私たち人間が修行によって自力で到達できる世界の果てです。視線の先に映る内陣の天井、つまり浄土に至るには、仏の案内が欠かせません。
このように礼拝は浄土に至る道筋を体現することであり、お堂はそのための器なのです。ですから、お堂では必ず正座して礼拝することをおすすめします。座る位置、視線の動きによって目に映るもの、その一つ一つの変化が仏の世界へのいざないなのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 建築の話』
『建築の話』はこんな人におすすめ!
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「うだつが上がらない」は建築からうまれた言葉?
本書、「図解 建築の話」では建築について様々な知識を提供していますが、ここではその中でも日常生活でもなじみのある「うがつが上がらない」という言葉について、ご紹介しましょう。
「うだつの上がらない人だ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。うだつは漢字で「卯建」と書き、日本家屋に見られる設備です。うだつは防火設備だと解説されることがありますが、当初の目的は違いました。
中世から近世にかけての町家の屋根は、多くが板葺きでした。強い風にあおられると、めくれあがってしまいます。これを防ぐため、茅などを束ねて屋根を押さえたのが、うだつの始まりです。そもそも可燃性ですから、防火機能はほとんどなかったと考えられます。江戸時代に入ると、壁が漆喰塗りになり、屋根は瓦になって、町家の防火性は高まりました。しかし、軒裏部分は火が走りやすいので、袖壁を外に出し、漆喰で固め、延焼を防ぐ「袖うだつ」が登場します。
うだつが防火設備から意匠をこらしたものをにかわったわけ
このころ、うだつが防火設備になったのです。火事が多いのは冬ですから、袖うだつは冬に風が吹く側につければこと足ります。しかしそれではバランスが悪いので、厚みの違うものを両サイドにつけるようになりました。よく観察すると、風下側のうだつは薄く、風上側は火に耐えるよう厚く、つくられていることがわかります。
とはいえ、このようなうだつを設置するのにはそれなりの費用がかかります。そこから「うだつの上がっている家は成功している」というイメージが浸透し、「うだつが上がらない」という表現がうまれたようです。そのためか、現在も残っているうだつの多くは、本来の機能とは別にうだつの壁面には細かい装飾や小屋根に意匠を凝らしたものとなっています。
あなたの好奇心をくすぐる建築のトリビアが満載です
只今紹介した「うだつ」という言葉の由来だけでなく、本書では建築の様々な知識を紹介しています。その数実に60個です!以下の5つのパートに分けて紹介をしているため、気になるパートから読むことが可能です。
「①日本の建築は知らないことだらけ」「②こんな目で見ると近・現代建築も面白い」「③寺社はこだわりの世界」「④城・庭が育んだ日本の美意識」「⑤建築を支えた縁の下の力持ち」の5章にわたって、日常生活において切手は切り離せない「建築」の奥深い世界を図解で分かりやすく解説します。
シリーズ累計250万部は伊達じゃない!豊富に使われた図解の圧倒的わかりやすさ
「図解 建築の話」と銘打っているだけあって、図解がふんだんに使われています。
右ページに文章、左ページに図解で解説という形で全頁が構成。
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【書誌情報】
『図解 建築の話』
著者:スタジオワーク
身近な建物が楽しくなる。ナゾとギモンを一挙解決!屋根の形は、どうやって決まるの? 正面だけが西洋風の看板建築って、どんな構造? うだつが上がらないの、うだつって何? 日本の建築をテーマに、さまざまな建築のナゾを楽しく解き明かします。古民家から、お寺、神社、城、庭、代表的な近・現代建築まで、建築家ならではの視点で、建築物の見方、楽しみ方を図解します。理系の知識がなくても大丈夫。私たちの生活や伝統美など、暮らしの文化に根ざした日本建築のスゴさと面白さがわかります。建築士しか書けない精緻なイラストを満載。60項目で楽しむ建築エンターテインメント本です。
公開日:2022.09.29