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肺はガス交換によって血液を酸素で満たす!

Text:加藤雅俊

「呼吸」という言葉から、どんなことをイメージするでしょうか? 私たちが無意識におこなっている空気を吸ったり吐いたりする行為は、生理学的には「換気」と呼ばれています。実は、呼吸というのはこの「換気」と「ガス交換」から成り立っています。これからお話する「ガス交換」というしくみは、肺と血液、もしくは血液と細胞の間でおこなわれています。

肺と血液でおこなわれるガス交換

外から吸い込んだ空気は、まず肺のなかの1つ1つの肺胞に取り込まれます。肺胞の表面にはたくさんの毛細血管があり、そのなかには全身の細胞から二酸化炭素を回収してきた「静脈血」が流れています。肺胞内には酸素が多く二酸化炭素が少ない状態なので、バランスをとるために肺から血液に酸素が移動し、血液から肺へと二酸化炭素が移動してきます。これ をガス交換といい、血液は酸素たっぷりの状態になります。酸素がたっぷり入った血液は、とても鮮やかな赤色の動脈血となり、肺から心臓を経て全身に送り出され、全身の細胞に酸素を運びます。一方、血液から肺に移動した二酸化炭素は、気道を通って体の外へ排出されます。このように血液は、肺を出るときは動脈血として旅立ち、一仕事終えて肺に戻ってきたときは、静脈血になっているというわけです。それをきれいにする場所が、肺なのです。肺と血液の間でおこなわれるガス交換を、「外呼吸」と呼んでいます。

血液と細胞でおこなわれるガス交換

ガス交換は、血液と細胞の間でもおこなわれています。すでにお伝えしたように、細胞がエネルギーをつくり出すためには、酸素が必要です。私たちがそうであるように、1つ1つの細胞も、常に呼吸をしているのです。細胞でエネルギーがつくられる過程では、必然的に二酸化炭素が生じます。二酸化炭素は大切な働きがありますが、大量にはいらないので、動脈血が細胞に酸素を渡すのと交換に、二酸化炭素を細胞から回収していきます。これが、血液と細胞の間でおこなわれるガス交換で、「内呼吸」と呼んでいます。鮮紅色の動脈血と違い、二酸化炭素を回収したあとの静脈血は、暗赤色に変化しています。そして心臓を経て肺に戻っていきます。

肺に戻った静脈血は、冒頭で説明したように、肺胞の毛細血管に入ります。そして、肺と血液のガス交換がおこなわれ、 再び酸素たっぷりの動脈血になって全身に送り出されます。肺では、このような循環が途切れることなくおこなわれています。血液にとって肺は、酸素を受け取る場所であり、不要な二酸化炭素を排出する場所でもあるのです。肺と血液、血液と細胞という2つのガス交換によって、私たちは常にきれいな酸素を体に循環させて、脂肪を燃やし、エネルギーをつくることができます。この循環をスムーズにおこなうことが、健康を維持する上でとても重要と言えます。

肺の仕事は実にすごい!

しかも、肺のすごさはそれだけではありません。私たち人間は、酸素を取り入れて、二酸化炭素を排出して生きています。これだけを聞くと、人間にとって二酸化炭素は不要なものだ、と思うかもしれません。しかし実際には、大切な役割があります。「過換気症候群(過呼吸症候群)」をご存知ですか? その名の通り、突然、過呼吸になり、息苦しくなる病気です。過度なストレスなどで呼吸が速くなり、酸素を吸い過ぎたことにより酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、二酸化炭素の量が低下 してしまったのです。

なぜ、二酸化炭素の量が低下するとだめかというと、二酸化炭素には、脳の血管を広げる働きがあります。酸素たっぷりの血液が理想といっても、血液中の二酸化炭素がゼロになると、血管が細くなり、逆に、体のすみずみまで酸素を届けること ができないのです。そのため、肺と血液のガス交換では、肺は、血管を広げるのに必要な分だけ、二酸化炭素を残してくれています。心臓に比べると、ちょっと地味な存在にも思える肺が、実はこんなことまでやってのけているなんて、すごいと思いませんか?

【書誌情報】
『肥満がいやなら 肺を鍛えなさい』
著:加藤雅俊 (薬剤師、体内環境師、薬学予防医療家)

肺の主な役割は「呼吸」と「血液循環」。酸素を含んだ血液を体内に循環させているが、十分に機能しないと不調を招く。 本書では、肺を鍛える方法として「肺ストレッチ」を提案。肺と血液の関係を説明しながら、その方法を紹介する。