前頭葉は驚くが、側頭葉はシーン
ひらめきというのは、自分にとっても予測のつかないもので、その瞬間、私たちは驚きすら感じます。しかし、驚いているのは、実は自我の中枢である前頭葉だけです。
側頭葉にとっては驚きでも何でもありません。ひらめいた内容は記憶のアーカイブにあったもので、それはすでに知っていることだから。同じ脳内で、このようなずれが起こっていることは不思議なことですよね。
また、何が起こるかわからない状況は、感情を生み出します。たとえば、サプライズでプレゼントを渡されたとき、「喜び」が爆発するはずです。決まったことよりも、決まってないことのほうが、より感情を掻き立てるものです。
これと同じように、ひらめきがなぜうれしいかというと、そこに最大の不確実性があるからです。
もともと自分の脳がつくり出したことなのに、ひらめきで「ああ!」と驚くことができるなんて、人生のぜいたくといえるのではないでしょうか。
何かがひらめいたとき、神経細胞は一斉に活動をはじめます。ひらめいた瞬間の脳の目的はただ1つ。ひらめいたことを確実に記憶に定着させることです。その瞬間を逃さないために、脳の神経細胞は0. 1秒くらいの時間で一斉に活動を開始するのです。
これは普段の脳の神経細胞の活動の様子から見ると、きわめて驚異的な動きです。それだけ、神経細胞もひらめきを逃さないために必死なのでしょう。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 脳の話』
著:茂木健一郎
シリーズ累計発行部数150万部突破の人気シリーズより、「脳」について切りこんだした一冊。「なぜ、脳から意識が生まれるの?」「ひと目ぼれは、どうして起きる?」「頭がいいって、どういう人?」人の脳は不思議でいっぱい。身近な疑問でナゾを解明! いまだに解明されない現代科学最大の謎といわれる脳。脳を知ることは、自分自身を知ることです。テレビや雑誌など、さまざまなメディアで活躍する脳科学者の著者が、脳の働きや仕組みを最新のトピックスや知識を使い、図解を交えてわかりやすく解説します。脳力を最大限に発揮させる方法から、「ひらめき回路」の鍛え方、、AI時代の脳の活かし方、脳の機能まで、疑問形式で楽しく読める脳の話が満載。仕事や学習、恋愛、人付き合いなど日常の生活でも役に立つ、脳のエンターテインメント教養本です。脳は自分を映す鏡。人工知能時代に負けない、ヒトの脳の大きな可能性がわかります。
公開日:2020.09.25