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プロ野球選手を輩出する…地元網走を味方につけるため掲げた「5つの誓い」とは!?【東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方】

Text:樋越勉

5つの誓い

ひと冬が過ぎ春から新しい高校生15名がスポーツ推薦で入って来た。チームに残った2年生以上6名と合わせた21名が新しい船出の船乗りになった。チームを作るにあたって彼らに伝えたのは、「とにかく勝つために執念をもって野球に取り組んでほしい」「スパルタだが、それについてきて欲しい」「必ずお前たちを1部リーグで優勝できるチームにするから」と言い聞かせてみんなを叱咤激励した。

グラウンドや道具の整備についても、大学側がかなり協力体制をとってくれて、だいぶ野球部らしくなっていった。

新たに必要とされたのは、この地で戦うことを決めてくれた人の住まいだ。寮の設置を大学側にお願いしたが、網走市と大学開学時に「寮は設置しない」との協定を結んでいたので無理だった。学部生全員が下宿・アパートに住む事で地元に経済効果を及ぼす意図があったそうだ。

そこで私は野球部員だけを入れてくれる合宿所の協力者を探した。様々な模索をし、地元にお願いもしてみたが一向に埒が明かない。地元の建築会社のオーナー約5名に集まってもらう機会を得て、私たちの全国大会出場への情熱をぶつけてみたが、あまり理解されなかった。

「東京出身の、どこの馬の骨ともわからない奴が夢物語を語っている」と思われたのだろう。それでも何度も何度も説明会を続け協力を仰いだ。その中で私は『五つの誓い』を立てることにした。

一、2部リーグを優勝し1部に昇格する。
二、部員を100名集める。
三、1部で優勝し全国大会に出る。
四、プロ野球選手を輩出する。
五、全国制覇

 

聞いていた方々は呆れるというか、笑っていた。

「この田舎で、部員が100人集まるわけがない。1部優勝なんてできる訳がない。まして、プロ野球選手を輩出するなんて到底無理」そう言われている気がした。北の最果て・網走で私が誓った五つの誓いは、夢物語にしか思えなかったのだろう。

最初にこの誓いを信じてくれたのは、当時の合宿所のオーナーとなる石丸さんだ。「家を建ててあげます」と2人1部屋の部屋人が入居可能なアパートを建てて頂いた。これは我々にとってとても大きな前進であった。

私も一緒に寝泊まりする事も有り、一緒に食事をし、一緒に酒を飲み、一緒に風呂に入り、一からの野球部の人間作りが始まった。

自分で目標を立て言葉に出し、その目標に向かって努力する。そしてひとつずつ達成していく事で自信をつける。そこでまた次の目標に向かう。そういったことが大切であると、改めて感じたのだった。また、地元の風土、考え方、生き方を知りながら行動する事の難しさも知った。

出典:『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方』著/樋越勉

『東農大オホーツク流 プロ野球選手の育て方』
著者:樋越勉

多くのプロ野球選手を輩出する北の最果て、北海道網走市にある東京農業大学オホーツクキャンパス野球部。恵まれた施設環境ではないにも関わらず、なぜ有力選手が育つのか⁉東農大学野球部のカリスマ、樋越監督の選手を見抜く眼力と、その育成術を紹介‼プロ野球選手の育て方、ドラフトへ送り込む手腕、練習環境の整え方などを、具体的に解説するプロ野球ファンや指導者必見の一冊。愛弟子の周東佑京のコメントも収録。