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ピッチングの軸になる「ストレート」ってどんな球?【革新的投球パフォーマンス】

Text:高島誠

「ストレート」ってどんな球?

投手にとって、ピッチングの軸になる球種がストレートです。質の高いストレートを投げるためにも、まずは「ストレート」とはどんな球かを整理しましょう。

日本では「真っすぐ」や「直球」とも言われますが、アメリカでは「フォーシーム」(Four-seam fastball)と呼ばれます。文字どおり、ボールが1回転する間に縫い目が4回現れるからです。「ツーシーム」(Two-seam fastball)はボールが1回転する間に縫い目が2回通過します。

日本では伝統的に「きれいなスピンの効いた真っすぐを投げろ」と指導され、ストレートが「シュート回転する」のはよくないとされてきました。しかしストレートをラプソードで測定するとわかるように、決して〝真っすぐ〟の軌道を描くわけではありません。必ず何らかの変化をしています。

メジャーリーグでは昨今、ゲリット・コール投手(ヤンキース)やジャスティン・バーランダー投手(ヒューストン・アストロズ)など、一定以上のホップ成分やシュート成分を含むフォーシームを投げる投手が活躍しています。シュート回転するのはある意味〝普通〟のことで、逆に武器としても使えます。

例えば、本書のモデルを務めている赤沼投手はスリークオーターとサイドスローの間くらいとリリースポイントが低いため、ストレートにはシュート成分が多く、投手から見て右斜め上方向にホップします。赤沼投手はこうした特徴を活かし、〝動くボール〟を武器にしています。対して、オリックスの山岡投手はオーバースローでリリースポイントが高いため、ストレートはシュート成分が少なくホップします。

山岡投手、赤沼投手ともに回転効率の高いストレートを投げている一方、シュート成分が異なるのは投球フォームにも関係があります。回転効率の高いストレートを投げるには腕を振る角度とボールの回転軸を合わせる必要があり、この角度がフォームの異なる両投手では変わります。

ストレートのホップ成分を多くするには、回転効率を高めることがポイントです。

回転効率が100%に近いほど、きれいなバックスピンの回転軸で投げられています。つまり、ボールに最大限の変化量(TRUE SPIN)を与えられているということです。

よく、「きれいな回転のストレートはホップしている」と言われますが、実際にボールが浮き上がるわけではありません。ピッチャーが投じたボールは、重力の影響で落ちながらキャッチャーに到達します。それでも打者から「ホップしている」ように見えるのは、「マグヌス効果」が働いているからです。

ストレートにはバックスピンがかけられているため、ボールの上側では回転方向と空気の流れが同じになり、空気の流れが速くなります。逆にボールの下側では回転方向と空気の流れが反対になるため、空気の流れが遅くなります。そのため下から垂直に押し上げるような力(マグヌス力)が働きます。こうした現象により、打者の目には「きれいな回転のストレートはホップしている」ように見えるのです。


ストレートの回転効率を高めようと取り組む際、シュート回転を過度に気にしないでください。繰り返しになりますが、シュート回転するのは普通で、必ずしも悪いことではありません。

逆に、日本のアマチュア投手はストレートをシュート回転させないように意識するあまり、ジャイロ成分が多くなり、回転効率の悪い〝カットボール〟になっているケースがあります。バックスピンをかけるストレートにジャイロ成分が含まれている場合、ボールの軸が腕の角度より傾き、回転効率が下がっている可能性が考えられます。

ジャイロ回転は、アメフトボールのような回転の仕方です。銃弾と同じように、螺旋状に回りながら飛んでいきます。スライダーなどの変化球も、こうした回転をしています。

スピンの仕方が異なるストレートと変化球では、回転軸の傾きが変わります。バックスピンをかけるストレートは、目安として右投げなら時計の12時〜2時、左投げなら10時〜12時に傾いています。一方、ジャイロ回転をかける変化球(スライダー、カットボール、スプリットなど)は軸の傾きを変えることで、ボールの変化の仕方も様々に変わっていきます。


例えばスライダーを投げる際、ジャイロ回転の軸を上に傾けると(目安としてジャイロ角度は65〜74度)、スライド方向のサイドスピン成分が加わり、横滑りするように曲がります。一方、ジャイロ回転の軸を左に傾けると(同ジャイロ角度は85度以上)、ト ップスピン成分が加わり縦スライダーになります。スピンアクシスボールで回転軸を変えて投げると変化の違いがわかりやすいので、試してみてください。

ストレート、変化球ともに大事なのは、自分はどういう質のボールを身につければ相手打者を打ち取れるかを突き詰めることです。ラプソードを効果的に活用し、自分の特徴を最大限に活かせる投球スタイルを築き上げましょう。


出典:『革新的投球パフォーマンス』高島誠

『革新的投球パフォーマンス』
著者:高島誠

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