原始グレートウォールと大きな銀河の想像図
1989年、ハーバード・スミソニアン天文物理学センターのマーガレット・ゲラーとジョン・ハクラらによって、地球から約2億光年離れたところに、巨大な構造が発見されました。長さ約5億光年、幅約3億光年の膨大な銀河団からなる「壁」のような構造で、これが「グレートウォール」です。
「万里の長城(The Great Wall of China)」にちなんで、こう呼ばれるようになりました。しかし、発見されたのがグレートウォールのすべてなのか、全体のごく一部なのか明らかになっていません。天の川銀河が障害になって、完全な姿が観測できないからです。では、グレートウォールはどうしてできたのでしょうか?
現在では、連続して長く糸状に分布するダークマターにそって銀河が分布するため、このような構造になったのではないかと考えられています。ダークマターは、重力によって天体を引き寄せます。そのため、長くて薄い、超銀河団の壁をつくっているように見えるというわけです。ダークマターとは、質量はもっているが、通常の観測手段では検出できない暗黒物質のことで、いまだ正体は不明です。
ダークマターの候補としては、未発見の素粒子などが挙げられています。遠ざかる天体からくる光のスペクトル線が、波長の長いほう(=赤いほう)にずれることを「赤方偏移」といいます。これを応用することで遠方の銀河の距離を正確に観測することができるようになり、グレートウォールも発見できたのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』
監修:渡部潤一
「地球はどうやってできたの? 宇宙のどこにあるの? 」「太陽が巨大化するってホント?」「月のクレーターや『月の海』って?」「 宇宙はどんな構造?いくつもあるの? 」など素朴なギモンに即答で宇宙のナゾに迫る! ——地球の生い立ちから、お隣の天体・月の謎、太陽と惑星の素顔、恒星と銀河、宇宙論まで、最新の天文学、宇宙物理学、惑星科学に踏まえてやさしく解説。豊富なイラスト、61テーマと興味深い宇宙・星座コラムで、夢とロマンに満ちた、いちばん新しい宇宙の姿がよくわかります。太陽系のナゾから最新の宇宙理論まで、宇宙のフシギをズバリ解明します!
公開日:2024.05.24