エネルギーの超膨張がきっかけ
138億年前。この宇宙は「無」から生まれた1点が膨張してできたと考えられています。「無」には、「真空エネルギー」という巨大なエネルギーがつまっていました。これは、いまでも宇宙を膨張させ続けているダークエネルギーと同じものだと考えられています。真空エネルギーは、「相そう転て ん移い」という現象によって解放され、宇宙の膨張が起こりました。相転移を簡単に説明すると、物質が気体↓液体↓固体のように変わっていくことです。
水でたとえると、水蒸気が水に変わるとき、水蒸気の熱が奪われ水になります。奪われた熱は放出されます。これがエネルギーです。つまり相転移はエネルギーを生むということ。宇宙も、真空エネルギーが相転移によって大量のエネルギーを放出し、急激に膨張しました。
これを「インフレーション」と呼びます。インフレーションは最初の1点からビッグバンまでの10のマイナス44乗秒の間に起こりました。これは、わずか1秒の1000兆分の1の1000兆分の1の1万分の1の間のことです。この一瞬で、ウイルスが銀河団以上の大きさになるほどの急激な膨張が起ったのです。
インフレーションがおさまると、その際に放出された熱によって宇宙は加熱され、巨大な火の玉のようになったと考えられます。これが「ビッグバン」です。巨大な火の玉は膨張を続け、やがてゆっくりと冷えていき、クォーク、電子、ニュートリノ、光子などの素粒子ができていったのです。つまり、ビッグバンを起こしたのはインフレーションという急膨張だったのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』
監修:渡部潤一
「地球はどうやってできたの? 宇宙のどこにあるの? 」「太陽が巨大化するってホント?」「月のクレーターや『月の海』って?」「 宇宙はどんな構造?いくつもあるの? 」など素朴なギモンに即答で宇宙のナゾに迫る! ——地球の生い立ちから、お隣の天体・月の謎、太陽と惑星の素顔、恒星と銀河、宇宙論まで、最新の天文学、宇宙物理学、惑星科学に踏まえてやさしく解説。豊富なイラスト、61テーマと興味深い宇宙・星座コラムで、夢とロマンに満ちた、いちばん新しい宇宙の姿がよくわかります。太陽系のナゾから最新の宇宙理論まで、宇宙のフシギをズバリ解明します!
公開日:2024.05.29