宇宙はいくつもあるの?
インフレーションとビッグバンによってこの宇宙が誕生した、とお話ししましたが、ここに注目すべき仮説があります。それは「マルチバース(多重宇宙)理論」です。インフレーション理論を最初に提唱した東京大学の佐藤勝彦名誉教授が提唱している理論です。宇宙は真空エネルギーが相転移して(インフレーション)、ビックバンを経て形ができました。しかし、相転移は同時に起こるものではありません。必ず局所的にはじまるものです。
たとえば水が凍るとき、一瞬で全体が凍るわけではありません。一部分から凍りはじめますよね。これと同じで、宇宙においても相転移は一斉ではなく、局所的にはじまったはずです。つまり、相転移が終わったところと、まだ相転移の途中のところが混在していたと考えられます。
相転移が終わった空間では、膨張がはじまります。するとその空間の一部である相転移途中の空間は膨張から取り残されます。しかし、相転移途中の空間の内側ではインフレーションによる急激な膨張が起きているはず。膨張の速度が遅い空間でも、内側は急膨張している。そんなことがあり得るのでしょうか。
実はこのときに、アインシュタインの相対性理論から導き出される「ワームホール(時空のある1点とほかを結ぶ空間領域)」ができているというのです。つまり異次元空間です。最初にインフレーションが起きた宇宙が母宇宙。そのなかでワームホールに子宇宙ができ、そのなかに孫宇宙ができる……。こうして宇宙の多重発生が起き、宇宙は無限に存在することになるのです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解プレミアム 宇宙の話』
監修:渡部潤一
「地球はどうやってできたの? 宇宙のどこにあるの? 」「太陽が巨大化するってホント?」「月のクレーターや『月の海』って?」「 宇宙はどんな構造?いくつもあるの? 」など素朴なギモンに即答で宇宙のナゾに迫る! ——地球の生い立ちから、お隣の天体・月の謎、太陽と惑星の素顔、恒星と銀河、宇宙論まで、最新の天文学、宇宙物理学、惑星科学に踏まえてやさしく解説。豊富なイラスト、61テーマと興味深い宇宙・星座コラムで、夢とロマンに満ちた、いちばん新しい宇宙の姿がよくわかります。太陽系のナゾから最新の宇宙理論まで、宇宙のフシギをズバリ解明します!
公開日:2024.05.30