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健康寿命を左右する重要な筋肉とは!?

Text:野坂和則

筋肉量は下半身を中心に減っていく

筋肉量は20代をピークに減少していきます。なかでも下半身の筋肉の減り方が大きく、上半身の筋肉は年齢による減少が下半身の筋肉ほど大きくありません。

これは年齢を重ねるにつれ、下半身の筋肉を使う機会が減るからではないか、と考えられます。学生時代は自転車や公共交通機関を使って通学し、授業や学校行事で体を動かすことが多かったはずです。社会人になると移動は車やエスカレーター、エレベータに頼ることが増え、運動も忘れがちになります。これに対し、上半身の筋肉を使用頻度は、若い頃も歳をとっても大きくは違わないのかもしれません。

下半身、特に脚の筋力が衰えていくと、加齢とともに多くのリスクを背負うことになります。最も目立つのが、つまづきやすくなったり、転倒やロコモティブ症候群※1などの危険が高まることです。※1 加齢に伴い、関節や筋肉といった運動器の働きが低下すること。歩行やバランスを保つことにも支障をきたせば、要介護や寝たきりになるリスクが高まる。

ここまでは多くの方が想定できると思いますが、その影響はさらに全身へ及びます。下半身の筋肉には血液を上半身へ押し上げ、血液の循環を助ける役割があります。しかし、下半身の筋力が落ちると心臓がその役目を補い、負担が増します。その結果、息切れや動悸、むくみや冷えといった症状が表れるのです。さらに、筋肉量の減少で体内の糖の消費が少なくなると、血糖値が上がりやすくなります。

骨への影響も心配です。骨は筋肉への負荷や衝撃に刺激されて強くなります。筋肉量が少なければ、受ける刺激も減って骨が弱くなり、骨折をしやすくなったり、骨粗鬆症になりやすくなってしまうのです。

このように下半身の筋肉量の低下は、高齢者のQOL(生活の質)を下げるさまざまな要因につながります。それは健康寿命を左右するといってもいいでしょう。ですから運動や歩くことなど、なるべく下半身の筋肉を使うことを意識したいものです。本書で紹介する運動プログラムにも、そうした点が反映されています。

【書誌情報】
『ゆ〜っくり座れば、一生歩ける!』
著:野坂和則

一生歩ける足腰はゆ〜っくり座ることで鍛えられる!「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は、男性は約72歳、女性は約74歳です。誰でも歳をとるにしたがって身体機能は衰えていきますが、その衰え方には大きな個人差が。その個人差の要素のひとつが「運動」です 。運動をしている人とそうでない人では、健康寿命に大きな差が出てきます。運動といってもいろいろありますが、健康寿命を高めるには脚の筋力を維持し、向上させる筋力トレーニングが必須です。しかし、そうは言っても普通の筋トレはつらそうだし、なかなか重い腰が上がらない……という方にこそ実践して頂きたいのが本書で紹介している「エキセントリック運動」です。ゆ~っくりイスに座る時、大腿の前側の筋肉は伸ばされていきます。これが典型的なエキセントリック運動です。本書では、自宅でできるエキセントリック運動を紹介しており、どうしてエキセントリック運動が一生歩けるような足腰をつくるのに適しているのか解説しています。試しに、ゆ~っくりイスに座ってみて下さい。それだけでもかなり脚に効いていることがわかるはず。つらくないのに効果は絶大――。エキセントリック運動をすれば、10年分の筋力低下を、たった2ヵ月で元に戻すことも可能です。転ばぬ先の杖、一生歩ける体でいられるように、今日から準備を始めましょう。高齢者の方はもちろん、家族全員でぜひ読んで頂きたい一冊です。