つまづきや転倒のリスクを遠ざける
体のバランスをとる能力は、加齢によって大きく低下します。
あるグループにバランス能力(平衡性)を測るテストをしてもらいました。両手を腰に当て、目を開けたまま、あるいは目をつぶって、片足でどれくらい立っていられるか、というものです。その結果、エキセントリック運動を中心に体を動かした後では、運動前に比べて片足立ちの時間が60%近くも長くなりました。これはエキセントリック運動が、バランス能力も向上させることを示しています。
うまく体のバランスをとるには、筋肉と中枢神経の連携が必要です。筋肉の出している力や長さといった情報を、瞬時に筋肉から中枢神経に伝え、脊髄や脳とやりとりをしなければならないからです。エキセントリック運動には、こうした連携機能を高める効果があり、バランス能力が上がるのでは、と思われます。
もうひとつ考えられるのは、エキセントリック運動で全身のさまざまな筋肉を刺激することが、バランス能力のアップにつながるというものです。エキセントリック運動は体の軸をしっかり固定したうえで、自分の体重や負荷を引き下ろします。体の軸がぶれると正しく行えないため、いろいろな筋肉が体を支えようとします。こうした動きの中で、バランス能力がアップする可能性もあります。
バランス能力はいくつになっても「歩いて、動ける」体の安定感をもたらします。とくに高齢者の場合は、つまづきや転倒の防止にも関わる大切な機能です。
【書誌情報】
『ゆ〜っくり座れば、一生歩ける!』
著:野坂和則
一生歩ける足腰はゆ〜っくり座ることで鍛えられる!「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」である健康寿命は、男性は約72歳、女性は約74歳です。誰でも歳をとるにしたがって身体機能は衰えていきますが、その衰え方には大きな個人差が。その個人差の要素のひとつが「運動」です 。運動をしている人とそうでない人では、健康寿命に大きな差が出てきます。運動といってもいろいろありますが、健康寿命を高めるには脚の筋力を維持し、向上させる筋力トレーニングが必須です。しかし、そうは言っても普通の筋トレはつらそうだし、なかなか重い腰が上がらない……という方にこそ実践して頂きたいのが本書で紹介している「エキセントリック運動」です。ゆ~っくりイスに座る時、大腿の前側の筋肉は伸ばされていきます。これが典型的なエキセントリック運動です。本書では、自宅でできるエキセントリック運動を紹介しており、どうしてエキセントリック運動が一生歩けるような足腰をつくるのに適しているのか解説しています。試しに、ゆ~っくりイスに座ってみて下さい。それだけでもかなり脚に効いていることがわかるはず。つらくないのに効果は絶大――。エキセントリック運動をすれば、10年分の筋力低下を、たった2ヵ月で元に戻すことも可能です。転ばぬ先の杖、一生歩ける体でいられるように、今日から準備を始めましょう。高齢者の方はもちろん、家族全員でぜひ読んで頂きたい一冊です。
公開日:2020.02.29