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スウィングの始動で「する」ことは…!?

Text:佐久間馨

世のレッスン書で言われている「大きく上体を回せ」とか「体重移動をしろ」といった教えのほとんどは「自分ですること」ではなく「自然に起きること」です。でも、多くのゴルファーは、レッスン書通りに「自然に起きること」をムリに「自分でしよう」として、わざわざゴルフを難しくしています。それは、自分で「する」 ことと、勝手に「なる」ことがわかっていないからです。

Sスウィングでは、スウィングの始動からフィニッシュまでの間に、究極的に自分で「する」ことは「スタート時に右ヒジを少し後ろに引く」だけです。同時に左手首のとう屈が起きれば、前腕も回転します。これ以外は、自分で何かをしようとしなくても勝手に体が動き、クラブヘッドが勝手に球を飛ばしてくれるのです。あなたがこれまでさんざん言われてきた「体重移動」も、ダウンスウィングでの「右足の蹴り」も、インパクトでの「左のカベ」も、自分で意図して「する」ものではなく、勝手にそう「なる」ものです。

テークバックでは、インナーコアは正面に向けたままアウターシェルの動きだけで始動します。腰の高さのテーブルの前に立ち、通常のアドレスをして、左手人差し指を伸ばしてテーブルの縁に触れてください。その状態で、肋骨、背骨、骨盤は一切動かさずに、人差し指をテーブルの縁に沿って、右に移動させられるところまで移動してみましょう。たぶん30センチ程度しか移動させられないと思います。それでいいのです。約30センチ、テーブルの縁に沿って人差し指を直線的に右に移動させると、そのとき、左の肩甲骨は背骨から大きく離れた状態になります。

いわゆるアウターシェルの動きだけでグリップは約30センチ、右に移動します。それをテークバックに置き換えると、クラブヘッドは時計の文字盤でいう8時のあたりまで引いた状態です。自分で「する」のはここまで、というかここが限界です。ただし、クラブヘッドには質量があります。ある程度の重さを持ったものがいったん動き出せば、慣性力が生まれます。つまり、8時まで引かれたクラブヘッドは、なおも斜め上方に移動し続けようとし、それにつられて、限界まで動いたアウターシェルに続いて、今度は肋骨が右に回り出します。

ところが、背骨は17度しかねじれません。それでもクラブヘッドは、なお動き続けようとする。すると、17度ねじれきった背骨に続いて今度は骨盤が右に回り始めます。しかし、骨盤は約30度しか右に向けません。骨盤を前傾させたときの股関節の可動域がだいたい30度前後だからです。こうすると、可動域の限界に達したところで自然とストップがかかり、そこがトップの位置になります。

以上が、Sスウィングのテークバックの始動からトップまでです。すなわち、バックスウィングで自分が「する」ことは、ただ1つ、始動でクラブが8時くらいを指すまで左腕を真っ直ぐ横に移動させるだけで、後はすべて勝手に行われるのです。質量を持っているクラブヘッドを、初めに正しい軌道上に乗せてやれば、後はクラ ブヘッドが行きたい方向は1つしかありません。慣性力によって正しいトップまで勝手に行ってしまうのです。同じく慣性力でコックも勝手に生まれます。コックは意識的に「する」ものではなく、勝手に「なる」ものなのです。本書の冒頭で、Sスウィングは「慣性力」と「連鎖性」を最大限に利用するから、やさしく打てて再現性が高いのだと申しました。

【書誌情報】
『誰でもできるナイスショットの絶対法則』
著者:佐久間馨

ゴルフのパットがうまくなるために、1アドレス(構え方)、2ストローク(打ち方)と距離感、3グリーンの読み方を写真を交えてその方法をわかりやすく解説。ラウンド当日の練習方法も、5分間~20分間の練習時間別に紹介。パッティングは、グリーンの傾斜を読む力、その感性を育むために必要な基礎技術をこの本で体得していただきたいと願いながら書きました。技術と感性が向上し、スコアアップに、そしてゴルフのおもしろさアップにつながりましたら幸いです。