1ℓの水の温度を15℃から100℃まで加熱するのに必要なガスの量は?
家庭に引かれているガスは、都市ガス13A(熱量45MJ/m3)とプロパンガス(熱量99MJ/m3)がメインです。キャンプで使用する携帯用ボンベやカセットコンロに使用するガスボンベは、ブタンガス(熱量128MJ/m3)です。13Aの組成(100%表示)は、メタン(90%)+エタン(6%)+プロパン(3%)+ブタン(1%)です。13Aガスを1㎥燃やすと45MJの熱量が発生します。
さて、ここで1ℓの水の温度を15℃から100℃まで加熱するのに必要なガスの量を計算してみましょう。水1ℓの重さは1㎏あります。この量の水の温度を1℃上げるのに必要な熱量は4200J(ジュール)です。したがって、15℃から100℃まで上げるには85℃上げなければなりませんから、4200×85=357000J=0.357MJの熱量が必要です。この熱量を得るために13Aガスを燃やすとしたら、0.357MJ÷45MJ/m3=8.0×10-3m3(=8000cc)の容積のガスが必要となります。こうした計算によって、各家庭についているガスメータで使用量を計り、1か月で使ったガスの量に応じた料金が請求されるわけです。
熱量というのは、実際にそのものを燃やして水の温度を上げ、その温度上昇で算定します。たとえば、ポテトチップス100gが持っているエネルギーは2・2MJです。ガスの代わりにこれを燃やして、先ほどの水1ℓ15℃を加熱して100℃にするのに必要な量を計算してみましょう。答えは16gと計算できます。ポテトチップスはすごいエネルギーを持っていることがわかりますね。
ところで、食品の袋などに記載されている熱量の単位はcal(カロリー)です。ジュールへの換算は1calが4・2Jに相当します。ということは、1ℓの水の温度を1℃上げるのに必要な熱量は4200Jですから、1000calある食品で代替できるわけです。覚えておくと、いざというときに役にたつと思いますよ。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修
物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!
公開日:2023.06.02