遠心力と速度の関係
ジェットコースターは、人が乗るライドを高所に持ち上げて、「位置エネルギー」を与えます。位置エネルギーは重さ×高さで表されます。高いところからは、物が自然に落ちていきます。落ちると、高さが減ったぶんの位置エネルギーは、「運動エネルギー」へと変化します。
運動エネルギーは、(1/2)×質量×速度の2乗で表されます。「エネルギー保存則」から、はじめに持っていたエネルギーは、低くなった位置の位置エネルギー+運動エネルギー+摩擦などによる「熱エネルギー」(損失という)に分配されます。摩擦は車輪とレールの間の転がり抵抗です。また、空気との間では形状抵抗と空気摩擦抵抗が損失となります。
ループを回るときに、ライドがいちばん上に来ても落ちないのは、遠心力と重量が釣り合うためです。釣り合うための速度条件は、ライドの質量に関係なく、v=√rgで表されます。
たとえば、ループ半径r=15mとすると、重力加速度はg=9.8m/s2ですから、これを速度条件の上の式に代入すると、ループの最高点で速度v=12.0m/sとなります。時速に換算すると44km/hです。ただし、最下点でループに入るときには、ループの高さ30mの位置エネルギーを稼ぐ分の運動エネルギーが必要なので、v=√2ghだけスピードアップする必要があります。ループ半径はr=15mなので、h=2r=30mを代入すると、vi=24.2m/sとなり、時速約87km/hと計算できます。それに先ほどのループ最高点での速度を加えると、131km/hでループに入る必要があるということです。それにしても、ジェットコースターフリークは、スキーのダウンヒルレースに匹敵するスピードをまともに受けるのはすごいことですね。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修
物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!
公開日:2023.06.22