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科学でスポーツを考える!物理学の観点から考えた効率の良い走り方とは?【すごい物理の話】

Text:望月修

足の置き方を意識する

効率のよい走りは、蹴った力をムダなく推進力に活かせること、重心が描く軌跡が地面に平行であることにかかっています。地面を斜め方向に蹴る理由は、その力の垂直方向成分を体重と釣り合わせるため、水平成分を推進力とするためです。体重と釣り合う上向きの力は、重心位置を一定の高さに維持し、最短距離を移動することで得られます。

ピョンピョン飛び跳ねるような走り方は、移動距離が長くなることに加え、最高点から落下する時間が余計にかかってしまう。こうした走り方は長距離では不利になるし、秒以下を争う短距離走でも、走り方のフォームは決定的な差をもたらす可能性があります。

体重を支えつつ推進力を大きくするには、これまで以上に大きな力によって角度を付け、地面を蹴らなければなりません。ただし、水平方向の力が最大静止摩擦力を越えると、滑ってしまう。そこは最大限に注意するところです。通常のトラックや地面との摩擦係数μ(物理記号でミュー)は、0・3程度です。走っているときの摩擦力は、0・3×体重となるので、60kgfの人が出せる最大の推進力は、0.3×60=18kgf=180Nになります。推進力を大きくするには、体重を増やすほか摩擦係数の大きなシューズを履くことが必要となります。

蹴る力を最大限に推進力に変換するには、摩擦係数μ=0・3とすると、水平面に対して73°で地面を蹴らなければなりません。また、地面に足を着地するとき、進行方向に対して斜め前方方向に踵から着地するとブレーキになります。足を着くたびにブレーキがかかるのでは速く走るのなどおぼつきません。速く走るための足の運びは、つま先で水平面に対する角度をなるべく大きくするように(可能なら垂直か、逆に後方側に傾けて)着地することが求められるのです。

つま先で地面を蹴る時の力の関係【眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修

物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!

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