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物理学から考える大谷翔平のボールスピードがすごい理由とは?【すごい物理の話】

Text:望月修

ボールのスピードを上げるにはどうすればいいんだろう?

ユニコーンと称される大リーガーの大谷翔平投手や日本球界の佐々木朗希投手は、急速160㎞以上のスピードボールを投げます。ある角速度ωで円運動する中心から長さrの点にあるボールの速度vは、v=rωで表されます。角速度は1秒間に何回転したかを表すものです。ただし、[°]ではなくrad(ラジアン)という角度単位を使います。180°がπradに相当します。

たとえば、1周が1秒だったと仮定します。1周は360°ですから2πradなので、角速度ωは2π/1秒=2π[rad/s]と表わされます。角速度は、実際には速度と同じなのですが、一方は角度を表しているためにそう呼ぶのです。半径1の円の円周は直径×πなので、2×1×πになりますね。この距離を1秒で進むので速度は2π[m/s]です。さて、肩を中心に腕をrの長さにして角速度ωで回転させると、ボールはv[m/s]の速度で飛んでいきます。式から、ボールの速度を上げるためには2通り考えられます。①腕の長さを長くする、②回転速度を上げるです。

たとえば、ボールを140㎞/h(=38.9m/s)で投げる投手が、160㎞/h(=44.4m/s)にまでスピードをアップしたいとしましょう。腕の長さを60㎝(0・6m)とすると、140㎞/hでの角速度64.8rad/sが導かれます。つまり、度に換算すると1秒間に3713°(約10 回転)となるのです。この回転角速度で160㎞/hのボール速度を実現する端の腕の長さは0・69mなので、センチ換算では69㎝あればよいことになります。ということは、腕の長さを9㎝長くすればいいのですが、それは不可能。ですが、これを投げ方で達成することは不可能ではないかもしれません。指先でボールを押し出すようにすればいいのです。

反対に腕の長さがそのままであれば、角速度を74.0rad/s(4240°/秒=約12回転/秒)にしなければなりません。達成は至難の技ですが、腕振りの速度をアップするために、1秒間に12回転できるようにぐるぐると回す練習が必要となるでしょう。といっても、実際にボールを投げるときには腕だけではなく、全身を使いますね。そのため、どこを中心に回転させるかで半径は異なってきます。腰回りを中心とすれば、回転角速度はもっと遅くすることもできます。

また、腕は上腕、前腕、掌の部位があるので、それぞれの回転角速度で動かし、全体的にスナップを利かせて角速度を上げるという方法もあります。図1で示しているのが上腕と前腕と仮定すれば、最終速度は           で表せます。このように回転の組み合わせによってボールの速度を速くできる可能性が、物理的にはあるのです。

大谷翔平のようなスピードボールを投げるには?【眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』著/望月修

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 すごい物理の話』
著:望月修

物理学は、物質の本質と物の理(ことわり)を追究する学問です。文明発展の根底には物理学の考えが息づいています。私たちの生活の周辺を見渡しただけでも、明かりが部屋を照らし、移動するために電車のモーターが稼働し、スマートフォンの基板には半導体が使われ、私たちが過ごす家やビルも台風や地震にも倒れないように設計されています。これらすべてのことが物理学によって見出された法則に従って成り立ち、物理学は工学をはじめ、生命科学、生物学、情報科学といった、さまざまな分野と連携しています。……料理、キッチン、トイレ、通勤電車、自動車、飛行機、ロケット、スポーツ、建築物、地震、火山噴火、温暖化、自然、宇宙まで、生活に活かされているもの、また人類と科学技術の進歩に直結するような「物理」を取り上げて、わかりやすく図解で紹介。興味深い、役立つ物理の話が満載の一冊。あらゆる物事の原理やしくみが基本から応用(実用)まで理解できます!

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