社会的排除の状態にあると攻撃性が高くなる
1995年から2001年にかけてアメリカで発生した15件の学校での銃発砲事件のうち、13件の加害者はひどいいじめや仲間外れにあっていました。また、日本でも強盗犯少年は家族との関係が希薄で、社会からの疎外を感じている者が多いという指摘がされています。
このように家族や仲間から疎外され、社会的な絆を形成できていない人は攻撃行動を起こしやすいのでしょうか? トゥエンギーはこうした「社会的排除」と攻撃行動の関係を検証するために次のような実験を行っています。
まず4〜6名の初対面の学生を集め、15分ほど会話をしてもらいます。次に個別にアンケートを行い「参加者のうち一緒に課題を行いたいと思う人物」を2名挙げてもらい、参加者を「グループの全員から一緒に課題を行いたい人物に選ばれた」と伝える受容条件グループと、「グループの誰からも一緒に課題を行いたい人物に選ばれなかった」と伝える拒否条件グループにわけます。
その後、グループとは無関係な相手と、勝利すると相手のヘッドフォンに不快なノイズを流して嫌がらせできるゲームを行ってもらいます。
すると、拒否条件の参加者は受容条件の参加者に比べ、相手に流すノイズの強さが1・4倍、長さが2倍と高い攻撃性を示しました。
参加した学生たちは、実験のために疑似的な社会的排除の状態を与えられただけ過ぎないのですが、それでも疎外されているという感情を抱いただけで、このような高い攻撃性を示す結果となったのです。
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也
「社会心理学」は、心理学の中でも重要かつ人気のジャンル。個人同士の協力、競争、攻撃、援助など「他者との関係」、そして集団、組織など個人を取り巻く「社会との関係」をテーマとする「社会心理学」を、わかりやすく、かつ堅苦しくならないように図解・イラストを用いて紹介する。「社会現象と心理学」、「職場における心理学」「社会の在り方と心理学」など、現代日本において興味深く読めるような身近なテーマを立てて、さらにこれまで行われた心理実験と結果など、「心理学」全般の内容を誌面に取り入れて解説する。会社、学校、家庭、友人ーー集団や社会の中の個や対人関係の本質、行動原理を社会心理学から読み解く1冊!
公開日:2023.06.15