人は報酬や罰を与えることで好奇心を失う
「動機付け」という言葉を知っていますか? ある行動を引き起こすのに必要な心の働きのことで、最近では社員の生産性を高めるために仕事に対する動機付けを行い、成果を上げようとする企業が増えています。
動機付けには、物事に対して面白さを感じて行動をする「内発的動機付け」と、報酬を得るまたは罰を回避するために行動をする「外発的動機付け」があります。とくに内発的動機付けは、本人の興味や関心がないと動機付けが難しいなど、難点はあるものの外的な要因に左右されずに行動が持続するので、ビジネスの場面でも非常に重要視されています。
ただし注意したいのが、内的な行動に対して外的な報酬を与えてしまう行為(過度の正当化)です。たとえそれが魅力的な報酬だとしても内発的動機付けが失われ、その人のやる気を損なう場合もあるのです。こうした現象を「アンダーマイニング現象」と呼びます。
レッパーらはアンダーマイニング現象を調べるために実験を行いました。この実験では、絵を描くのが好きな子どもたちをAからCの3つのグループにわけ、Aには「上手な絵を描けたら賞状をあげる」と伝えて絵を描いた子に賞状を渡します。
Bには何も伝えずに絵を描いた後に賞状を渡します。Cには何も伝えずに賞状を渡しませんでした。それから1週間後、自由時間に子どもたちが自主的に絵を描く時間を計測し各グループを比較しました
その結果、Aの子どもは、ほかのグループよりも絵を描く時間が大幅に短くなり、外的な報酬によって絵を描くのが好きという内発的動機付けが損なわれてしまったことがわかったのです。
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多数派の意見に同調してしまうのはどうして?
日本人はよく多数派に同調しやすい、そんなイメージがあるかもしれません。しかし、この傾向はどんな人にも当て余る普遍性を持ったものなのです。なぜ私たちは多数派の意見に同調しやすいのでしょうか?この同調について、有名な実験があります。
この実験はカード①に描かれた線と同じ長さのものを、カード②に描かれた3本の線の中から選ぶというもので、実験には8人の学生が参加しました。回答はひとりずつ順番に行いますが、実は参加者のうち7人は〝サクラ〞で、あらかじめどの線を答えるかを指定されていました。
明らかに間違った答えでも多数派に同調してしまう
この実験の目的は、多数が間違った回答をした場合、被験者はそれに同調するかを調べることで、被験者は7人のサクラの回答を聞いたあと、8番目に回答します。実験は線の長さを変えながら複数回行われましたが、問題自体はいずれもひとりで回答したときは正解率99%というごく簡単なものでした
ところが、7人全員が誤った回答をした条件下だと、被験者による誤答率は32%にも上りました。普通なら間違えようのない問題でも、全員が別の回答を選ぶと、それに大きく影響されてしまうことが明らかとなったわけです。なお、7人のサクラのうち、必ず正解を答える他者がひとりいた場合、被験者の誤答率は5・5%まで低下しました。
会社の会議などでも全員一致の意見に反対するのは勇気がいりますが、ひとりでも反対者がいれば意見を表明しやすくなります。同調を促うながすには全員一致であることが重要で、ひとりでも自分と同じ意見の人がいると、その圧力は大きく弱まるというわけです。
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【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 社会心理学』
監修:亀田達也
「社会心理学」は、心理学の中でも重要かつ人気のジャンル。個人同士の協力、競争、攻撃、援助など「他者との関係」、そして集団、組織など個人を取り巻く「社会との関係」をテーマとする「社会心理学」を、わかりやすく、かつ堅苦しくならないように図解・イラストを用いて紹介する。「社会現象と心理学」、「職場における心理学」「社会の在り方と心理学」など、現代日本において興味深く読めるような身近なテーマを立てて、さらにこれまで行われた心理実験と結果など、「心理学」全般の内容を誌面に取り入れて解説する。会社、学校、家庭、友人ーー集団や社会の中の個や対人関係の本質、行動原理を社会心理学から読み解く1冊!
公開日:2023.06.27