ティーイングエリアでやるべきことはいろいろあります。そのホールをどう攻めるかを考え、使うクラブを決め、球筋をイメージします。それからどこにティアップするかも決めなくてはなりませんね。これ以外にもう1つ大事なことがあって、それは「風を読む」ということです。しかし風を読むのは簡単ではありません。コースの全体図を頭の中に入れて、風向きに矢印を入れときなさいと私はよく言うんですが、ホールの形状によっては多少風向きや強さが変わってくるので、やはりその場での判断というものも大事になってきます。
よくあるのは、ティーイングエリアで感じている風と、飛んでいくボールが受ける風が違う場合があるということです。ティーイングエリアで感じる風だけで風を読むと、間違うときがあるんですよ。たとえば200ヤードのパー3。ティーイングエリアからグリーンを見ると旗がバタバタとこっちに向かってなびいているとしましょう。普通なら「アゲンストだな」と思って打つのでしょうが、ちょっと待ってください。風には速度があ ることを忘れてはいけませんよ。もし風速10mの風だとすると、グリーンからティーイングエリアまで風が吹いてくるまで約20秒かかることになりますよね。20秒はけっこう長い時間です。ということは、グリーンとティーイングエリアでは風の状況が違う可能性がある、ということなんです。だから「アゲンストだと思って2番手上げて打ったけれど、風がなくて大オーバーしちゃった」ということが起こるわけですね。こんなときは「風をやり過ごす」という意識が必要ですね。風が安定するまで待つんですよ。やむのを待つのではなく、自分の打った球の飛んでいく場所の風が、強いなら強いで安定していてくれれば計算できるわけですから、不安定な状況ではなるべく打たないということです。
風の読み方というのは難しくて、たとえば旗が左にはためいていても、右からの風とは限りません。もしかすると左からの風が、右サイドの木に当たって跳ね返っているのかもしれないからです。そんなときはどうするかというと、空を見ます。鳥や飛行機が飛んでいたらそれが風向きを教えてくれますし、葉っぱが舞っていることもあります。それが旗の向きとは逆のこともあるわけですから、木よりも高く球を上げる場合はその風向きを知る必要があるのです。なぜ鳥や飛行機が飛んでいると風向きがわかるかというと、鳥や飛行機は風に向かって飛ぶんですよ。とんびが羽を広げて飛んでいたら、そのとんびは風に向かっているんです。飛行機も同じです。アゲンストの風が強ければ強いほど、飛行機は低速で上がっていけますし、着陸も簡単です。ですから空港を作るときは、365日どの方向から最も風がくるかを調べて、その方向に向かって滑走路を作るんですよ。
ということは、空港に近いゴルフ場では飛行機が風向きをバッチリ教えてくれるということなんですね。ティショットを打とうとして、右から飛行機が飛んできて頭上を横切ったら、風は左から右なんです。優秀なキャディならそういうことがちゃんと頭に入っているわけですよ。木の葉っぱだって教えてくれますよ。松はダメですが、広葉樹の大きな葉っぱは、フォローの風が吹くとめくれて裏を見せるんですよ。裏は白いから、葉っぱが白く見えたらフォローだとわかるんです。ときどきティーイングエリアではまったく風を感じないのに、風を計算して打ったりすると「タケさん、なぜ風向きがわかるんですか?」と一緒に回っている人に驚かれることがありますが、こういうことをちゃんと見ているからなんですね。風向きがわかったら次はどうするかというと、その風を使うのか、それとも使わないかを決めることですね。ここははっきりしておかなければなりません。結論から言ってしまうと、風は使ったほうが得です。やさしくもなるので、風があるときは大いに使いましょう。
たとえばアゲンスト。いまのショートアイアンは溝規制で昔ほど止まらなくなっていますが、アゲンストの風はボールを止めてくれるんですよ。普通なら止まらない状況でも、向かい風が吹いているがゆえに止められるということはありますから、そんなときは利用しないと絶対に損です。風の影響というのは、おそらくみなさんの想像以上に大きいもので、フォローのアプローチは難しいんですよ。ボールが止められませんからね。全英オープンでもフォローのアプローチが残ってしまうと、どれぐらい風に押されて、どれぐらい転がってしまうかが予測しにくいから、世界のトッププレーヤーでも寄せることができなくなるんです。逆にアゲンストだと、ある程度止まるピッチショッ トを打てば止まってくれるから計算が立つんですね。アゲンストはコントロールできますが、フォローはコントロールしにくい、と覚えておくといいでしょう。
ティショットで風を使うときはどうするかというと、フォローの場合は狭いホールでも思い切って打っていけます。両サイドがOBで、ふだんはとても難しいホールだとしても、フォローの風だと風が前に運んでくれるので曲がりにくくなります。球を上げさえすればまっすぐいくような状況では、迷わずドライバーで打てばいいんです。逆にアゲンストの風だと、ふだんは全く気にならないようなOBゾーンにボールが飛んでしまうこともあるわけですから注意が必要なんですね。日本に多い、行って帰ってくるようなルーティングのコースでは、特に風による攻めと守りのメリハリが大事になります。フォローのパー4で、両サイドが池
だとするじゃないですか。ふだんはスプーンで刻んでいるんだけど、アゲンストのときは曲がりがさらに大きくなるので、スプーンで打っても曲がる可能性があるわけです。そんなときは2番アイアン、3番アイアンで打って、確実にフェアウェイをとらえておく。セカンドの距離が残ったとしても、ティショットで池に入れるリスクを徹底的に避けるマネジメントをするわけです。
折り返してフォローになった場合は攻めですよ。240ヤードのキャリーが出ないと池を超えないので、ふだんは刻んでいるパー5のティショットでも、フォローでは超える可能性が高くなるわけです。曲がるリスクも少なくなっているから、ここはドライバーで高い球を打って風に乗せ池超えを狙う。そういうゲームをしてもらいたいんですよね。風を読み、風を利用する。これができるようになれば、アナタのゴルフのレベルはグーンと上がりますよ。
【書誌情報】
『タケ小山のゴルフ超上達ノート 誰も言わない実戦的スコアアップ術』
著者:タケ小山
ゴルフスイングの習得に熱心になるあまり、スコアが二の次になっているアマチュア・ゴルファーが多い昨今。「残念ですが、こういう“スイング道”信者はスコアは作れない」と著者は言う。では、肝心のスコアメークの方法は? 本書では、ショット、アプローチ、パッティング、マネジメント、スコアアップの5項目でその方法を解説。2019年の新ゴルフルールの活用法など、具体例を上げて、わかりやすく紹介している。タケ小山流スコアの作り方が満載の1冊!
公開日:2020.05.02