武道に伝わる残心と氣のコントロール
フィニッシュの話が出たついでに、日本の武道や武芸に古くから伝わる、「残心」という考え方についても少しお話ししておきましょう。もちろんこれも、荒川先生から教えていただいたものです。
柔道でも剣道でも、もちろん合氣道でも、相手に技をかけたらそこで終わりではありません。たとえば剣道では打ち込んだ後、すぐに剣を体の中心に戻し、攻めにも守りにも対応できる姿勢、体勢になっています。技をかけ終え、力を緩めたり、リラックスすることはあっても、まだそこに心が残っている、つまり残心とはそういうことです。
これをゴルフに当てはめた場合、フィニッシュの後、多くのプロがリラックスし、クラブを体の中心に戻してボールの行方を追っている姿を見たことはないでしょうか?自分の思い描いたボールを打てたときには、そこからクラブをクルクルと回すのも、そうした姿勢、体勢がとれるからです。いずれにしても多くのプロのショットは、打ち終わってもそこに残心、つまり心が残っているためにバランスが崩れません。
残心の「心」は「氣」とほぼ同じ意味だと私は考えました。先ほど氣は鎮め、出し、止めることが大事だと書きましたが、これらの氣の流れはその瞬間で終わるものでは なく、エンドレスに繰り返されます。
達人になれば鎮め、出し、さらに止め、同時に臍下丹田に氣を満たすという流れをコ ントロールしているようです。氣は出たと同時に新たな氣が臍下丹田に充ち満ちていなければならないのです。
【書誌情報】
『ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄』
著者:辻村明志
上田桃子、小祝さくらプロをはじめ、女子のトッププロたちをコーチしている本書の著者・辻村明志氏。王貞治選手の一本足打法を作り上げた故・荒川博氏に師事し、ゴルフ指導に取り入れたことは有名だ。本書は、荒川氏から受け継ぎ、コーチングに活用している「氣のスウィング理論」を解説するもの。「氣は心を動かし、心が氣を動かす」という、同氏の考えに基づき、氣の力をゴルフスウィングに活かすことを目的に、その方法をイラストと写真を使いわかりやすく紹介する。
公開日:2020.06.08