インパクトはヘッドの入り口から目を離さない
私が指導している選手たちは、時間さえあればアドレスの構えから、練習場の柱やキャディバッグを右手で叩いています。この練習にはいろんな意味があるのですが、一番大きな目的がインパクトのときの目線なのです。
「ボールをよく見ろ」は、野球でもゴルフでもよくいわれることです。しかし、そもそもボールを見るのか、見ないのか。選手たちに質問されて、私なりに考えたのが、右手で柱やキャディバッグを叩く練習法でした。
どういうことかといえば、ボールを見る、見ないより重要なのが視界です。ヘッドアップはもとより、ダウンスウィングでの突っ込みや伸び上がりは、すべてスウィング中に視界が変わることに原因があります。
また、そんな視点から多くの人のスウィングを見ていると、ボールを真上から見ている人が多いことに気がつきました。スクウェアに構えることを意識するあまり、ボールと正対して構える人が多いせいでしょう。クラブの中でもっとも飛球線方向にボールをセットするドライバーでも、ボールを真上から見ようとする人がとても多いのです。ちなみにその視界が、両足のつま先を結んだラインが真っ直ぐでも、腕や肩、腰といった右サイドがかぶったアドレスになっていることもつけ加えておきます。
そこでボールの飛球線からやや後方、ヘッドの入り口を見るように構えさせ、そしてインパクトまではその視界を崩さないための練習が、この右手で柱やキャディバッグを叩く練習なのです。ちょっとしたことですが、インパクト前後のしぼり、シャフトをしならせヘッドを走らせることにつながります。
【書誌情報】
『ゴルフのトップコーチが教えるスウィングの真髄』
著者:辻村明志
上田桃子、小祝さくらプロをはじめ、女子のトッププロたちをコーチしている本書の著者・辻村明志氏。王貞治選手の一本足打法を作り上げた故・荒川博氏に師事し、ゴルフ指導に取り入れたことは有名だ。本書は、荒川氏から受け継ぎ、コーチングに活用している「氣のスウィング理論」を解説するもの。「氣は心を動かし、心が氣を動かす」という、同氏の考えに基づき、氣の力をゴルフスウィングに活かすことを目的に、その方法をイラストと写真を使いわかりやすく紹介する。
公開日:2020.08.29