触診なしで手術を決めるのは危険
整形外科での腰痛診療は、「初診→レントゲン→MRI→CT・血液検査など→手術→リハビリ」といった流れが一般的です。初診では問診や触診をしながら痛み方の様子を聞いたり、原因の目星をつけたりします。その後、レントゲンで骨の状態などを確かめ、容態によって薬の処方やトリガーポイント注射といった処置をします。以降は病態に応じてMRI検査、必要であれば手術を行います。
私は初診の患者さんに、必ず触診をするよう心がけています。というのも、腰痛の原因を特定するのは容易ではなく、画像診断を含めた複合的な視点が必要だからです。痛みのある部位を触ったり、筋力を調べたり、体を前後に倒したりして痛みの元凶を探ります。触診を行うことで、患者さんもしっかり診てもらっているという安心感が得られ、より診察結果に納得、理解していただけるようです。
ここで勘違いをしてほしくないのは、「触診をしない整形外科医が信用できないわけではない」ということ。診療方法に対する考えは医師それぞれで異なります。外来患者が多ければ、触診なしで画像検査を行うこともあるでしょう。
あくまでも目安ですが、何度か通院して一度も触診や筋力検査がなければ、「大丈夫かな?」と疑ってよいかもしれません。もしも触診をしないで手術をすすめられたら、要警戒です。セカンドオピニオンをお願いするか、別の病院にかかることをおすすめします。
一般的な腰痛診療の流れ
医療機関で異なりますが、通常は下のチャートのような流れで診療が行われます。まずは問診や触診、レントゲンで腰痛の原因を見つけるのが一般的です。
初診
仕事や生活習慣のほか、 「どこが、どのように痛むのか」などを問診で聞いたり、痛む部位を触診したりして病状や原因を診ていきます。
問診や触診から次の処置を検討
レントゲン(X線)
レントゲン撮影で骨の状態を確認します。 その状況によって内服薬や外用薬の処方、リハビリやトリガーポイント注射などの処置を行います。
これまでの処置で治らない、神経障害が認められる
MRI
レントゲンには写らない神経の状態、 椎間板などの関節の様子をつぶさに検査します。
これまでの処置で治らない、神経障害が認められる
CT、脊髄造影(せきずいぞうえい)、血液検査、骨密度検査など
主に手術の補助診断として行われる場合があります。
出典:『専門医がしっかり教える 図解 腰痛の話』著/吉原潔
【書誌情報】
『専門医がしっかり教える 図解 腰痛の話』
著:吉原潔
今や4人に1人が悩んでいるとも言われる国民病である『腰痛』。ぶつけた、痛めた、ぎっくり腰といった原因がハッキリしている腰痛だけでなく、『脊柱管狭窄症』『椎間板ヘルニア』『ぎっくり腰』などによる痛みや、病院で検査しても特に異常が無いと言われるものまで、痛みの原因は多種多様にあります。しかし、そんな痛みに対して痛み止めや筋弛緩剤などの薬で対処療法だけをしていても根本の治癒にはなかなか繋がらないため、しっかりと『腰痛の原因』と向き合うことが大切です。本書ではそんな腰痛を治して、長い人生を痛み無く健康に過ごすために、『脊柱脊髄外科専門医』と『フィットネストレーナー』という2つの肩書を持つ腰痛の名医による、腰痛が治らない意外な原因と、骨と筋肉にアプローチする自宅でできる腰痛のセルフケア法を紹介します。
公開日:2023.07.21