別の神経が伝える異なる感覚?
たとえば、指先などにケガをすると、体のダメージを知覚する特別な神経細胞組織「侵害受容器」が脊髄へ信号を送ります。脊髄からは、感覚伝導路を伝わって脳の大脳皮質にある「体性感覚野」と呼ばれる痛みの信号を処理する部位まで運ばれます。
すると脳がその情報を認識してはじめて「痛い」と感じるのです。そして、痛みを感じることで、体に何らかの異常や異変があることに気づき、危険から離れるなどの防衛の指令を下します。
同じように、体の異変を知らせるサインと考えられるものに「かゆみ」があります。かゆみは、皮膚の表面が外界から刺激を受けたり、アレルギー反応によって「ヒスタミン」などのかゆみを起こす物質が体内から放出されると、神経線維の末端部分がこれらの刺激を受け取って、その情報を脳へ伝え、脳が「かゆみ」として認識します。
痛みとかゆみには、いくつかの共通点があることから、どちらも同じ「痛覚神経」を通じて感じる症状で、「かゆみは痛覚神経が感じる弱い痛み」と考えられていました。
しかし、胃などの内臓に痛みを感じることはあってもかゆみを感じることはないことなどから、かゆみと痛みは別々の神経によって伝えられることが明らかになったのです。
かゆみを伝える神経は「C線維」と呼ばれる細く、情報を伝える伝導速度が遅い神経で、伝導速度の速い「A線維」の一部も、かゆみの伝達にかかわることもわかっています。
このようなかゆみと痛みですが、かゆみを引き起こす「ヒスタミン」が痛覚にも反応したり、逆に痛覚を刺激するカプサイシンの影響がかゆみにも現れるなど、現在も痛みとかゆみには複雑に絡からむ何らかの関係があるものと考えられています。
出典:『図解 人体の不思議』監修/荻野剛志
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脳は重くてシワの数が多いほど頭がいいのか?
生物の体には不思議なポイントが沢山あります。そして特に最も神秘的なカラダの部位と言えば人間の脳です。まずは、人体の脳における不思議について解説しましょう。
動物と脳の関係を比較すると、一般に小動物ほど体重の割に脳が重く、逆に大型動物ほど軽いことがわかります。動物の脳と体重の間には、「脳の重量は体重の0.75乗に比例する」という規則性があり、これを「スケーリング」といいます。ただし、この動物界の普遍的な規則にあてはまらない動物がいます。それがヒトです。ヒトは、動物の中では例外的に大きな脳を持っているのです。
また、ヒトの場合、アインシュタインの脳が1230グラムと一般的な成人男性の脳(1350〜1500グラム)よりも小さかったことから、脳の大きさと頭のよさは関係ない、ともいわれます。しかし、カリフォルニア大学の「脳の大きさと知能指数(IQ)の関係」の研究では、わずかながら脳の大きな人ほどIQが高く、とくに「大脳皮質」の「前頭前野」と「後側頭葉」の皮質が厚い人のIQが高いという結果が発表されました。
天才は生まれつきではない、幼少期がポイント
ところが、さらに研究を進めると、皮質が厚くてもIQが高くない人がいることもわかりました。このことから「IQの高さは皮質の厚さより、脳が幼少期にどれだけ成長したかが重要」といわれてきました。この説を裏づけるように、IQが120以上の人の脳は、7〜9歳頃の幼少期にはむしろ平均よりも皮質が薄く、その後13歳まで肥大化し、厚みを増し続けていたとされ、幼少期の教育熱は高まりそうです。
しかし、一方でIQはあらゆる知能を網羅した数値ではなく、万能性がないことも把握する必要がありそうです。昔からよく「脳みそのシワが多いほど頭がいい」といわれます。しかし、脳のシワは胎児のときに大脳が形成される過程でつくられ、生まれたときにはすでにできあがっているため、成長してどんなに勉強してもシワの数は増えないそうです。
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【書誌情報】
『図解 人体の不思議』
監修:荻野剛志
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公開日:2023.10.08