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『いてよかったと思ってもらえる選手に』トミー・ジョン手術を経て約2年ぶり復活の千葉ロッテマリーンズ西野勇士!【ラブすぽ独占インタビュー】

Text:花田雪

頼れる男が、マリーンズに帰ってきた。
2020年6月にトミー・ジョン手術。約2年間のリハビリを経て復帰を果たした西野勇士が、開幕からセットアッパーとして奮闘。好調な先発投手陣の後ろを支えるリリーバーとして、早くも存在感を発揮している。5月反攻を目指すチームに欠かせない投手陣のキーマンに、長かったリハビリ期間、さらには逆転優勝への想いを聞いた。

もう一度、一軍で投げる――
その思いだけでリハビリを乗り越えた

――シーズンが開幕して1カ月が経過しました。長いリハビリを経て復活を果たしたわけですが、現在の率直な思いを聞かせてください。

西野 この球場で、ファンのみなさんの前で投げることができることは、素直にうれしいと感じています。ただ、自分の中ではまだベストパフォーマンスが出せているわけではないので、そこはもうちょっと良くしていきたいです。

――手術前の状態に完全に戻ったわけではない?

西野 投げているボール自体はそこまで悪くないと思います。ただ、やはり実戦感覚がまだまだ圧倒的に足りていないので、バッターとの駆け引きやゲームの中で自分のボールをコントロールしていく……そういう部分がもう少し上がってくれば。

――昨年秋のフェニックス・リーグで実戦復帰を果たし、そこから今春のキャンプ、オープン戦を経ての開幕でしたが、自分の中で「やれる」という手応えはいつ感じたのでしょう。

西野 オープン戦でバッターの反応を見たときですかね。自分の真っ直ぐに対するリアクションで「あ、これはいけるかも」と感じました。

――とはいえ、実戦から長く遠ざかる中で、リハビリ中は不安も大きかったのでは?

西野 良い、悪いを繰り返して、身体はもちろんメンタル面でも起伏が激しかったですね。そのあたりのコントロールはとても難しかったです。

――2020年6月に手術を受けて、ボールを「持つ」まではどの程度かかったのでしょう。

西野 術後、3カ月後くらいにようやくボールを投げ始めることが出来ました。それまでは軽くシャドーピッチングをする程度で、ボールには一切触れなかったです。野球人生を振り返っても、それだけの期間ボールにに触らなかったのは初めてでした。

――トミー・ジョン手術を受ける以上、長期間のリハビリは覚悟の上だったと思いますが、それでも「早く復帰したい」という焦りは生まれるのでしょうか。

西野 これは手術を受けた選手なら全員思うことだと思うんですけど、「少しでも早く」という気持ちはどうしても生まれてしまいます。ただ、手術を受けた以上はある程度リハビリに時間をかけなければいけないという切り替えはできていました。

――西野投手の場合、リハビリ期間がちょうどコロナ禍真っただ中。社会全体が不安で包まれ、外出も制限されたと思いますが、そんな状況下でのリハビリは精神的にもきつかったのでは?

西野 本当に、トレーニングだけしかしていませんでした。逆を言えば時間はたくさんあったので、ピッチングのこと、トレーニングのことなどを勉強して、見直すことはできたかもしれないです。

――リフレッシュする時間はなかなかとれないですよね?

西野 そうですね。毎日、球場に行ってリハビリして、家に帰るの繰り返しでした。家で子どもと遊ぶくらいはしましたけど、それ以外は本当に家と球場の往復です。

――辛いリハビリに耐えられたのも、「もう一度、一軍で投げる」というモチベーションがあったからですよね。

西野 もちろんです。その思いがあったからこそ、リハビリもしっかりこなすことができました。

復帰後に寄せられたたくさんの言葉が大きな力になった

――約2年間の離脱を経て、今季は開幕から一軍入り。復帰初登板も初勝利も、初ホールドも記録しました。

西野 復帰して勝利投手になったときは、たくさんの連絡をもらいました。「おめでとう」「よかったね」「今年は球場に見に行くよ」……ファンの方、家族、友人からたくさんの祝福をもらって、本当にうれしかったですね。

――先ほど、実戦感覚が足りないという言葉がありましたが、これからの戦いについて自分の中で「課題」となる部分があれば教えてください。

西野 一番は制球力ですね。先ほども「ボール自体は悪くない」と話ししましたけど、そのボールを使った練習や試合が圧倒的に不足しているので、実戦の中で自分のボールをもっとコントロールしていく。変化球に関しては十分と言っていい手ごたえを感じているので、あとはその部分ですね。

――手術明けということで起用法についてもチームが色々考慮してくれている?

西野 今はチームに何を求められていて、どこを任せてもらえるかを考えながらやっています。その上で、手術明けなので様子を見ながら使ってもらったり、休養をもらえているので、起用法についてはすごく考えてもらっていますね。

――とはいえ今季は復帰早々、厳しい場面での登板も多い印象があります。たとえば、4月17日の日本ハム戦。佐々木朗希投手が8回パーフェクト、益田直也投手もノーヒットで繋ぎ、10回にバトンを受けたわけですが、ああいう場面ではプレッシャーも大きいのでは?

西野 緊張はしましたけど、実は「ノーヒット」の意識はあまりなかったんです。たとえば朗希が8回までパーフェクトで、チームがリードした状態で9回に投げる――というシチュエーションだったら、もうちょっと違う感覚だったのかもしれないです。あの場面はまだ同点で、自分が抑えても勝てるかわからなかったので、ヒットを打たれる打たれないよりも「0点に抑える」意識のほうが強かったですね。

――あの試合、万波中正選手に勝ち越しホームランを打たれてしまったわけですが、打たれた瞬間は「ヨシッ!」というリアクションをしたように見えたのですが……。

西野 「ヨシッ!」までは思っていなかったですね(笑)。ただ、打球の角度を考えると、まさかホームランになるとは思いませんでした。センターライナーか、どんなに悪くても頭を越える当たりかなと。

――「あれが入るの?」という感じ?

西野 ホームランを打たれたときって、打球の行方を見なくてもその瞬間の打球角度や当たりの強さで大体わかるんです。「あ、これはいかれたな」って。でも、あのときはその感覚は全くなかったのでちょっと驚きました。

――最後に、今シーズンはまだまだ先が長いですが、ファンに向けて、西野投手から意気込み、メッセージをお願いします。

西野 自分のピッチングはまだまだですけど、少しずつ良くなってきている実感もあります。このまま調整して、しっかりとチームの戦力になって、1年間終わったときに「西野がいてよかった」と思ってもらえるようになりたいです。チームとしては僕のいなかった2年間はAクラスにいて、それを見ながら「このチームの中に入って優勝したい」と思いながらリハビリを続けていました。だからこそ、今季はしっかりと優勝して、自分がその力になれるよう頑張りたいと思っています。

――貴重なお時間をありがとうございました!

取材:2022年4月28日
インタビュー及び記事執筆:花田雪
協力:千葉ロッテマリーンズ