立位姿勢をみる基準⓵ 前後
姿勢を判断するポイントも〝動き〞だった
立位姿勢をみる場合、姿勢だけで判断し、「正しい姿勢に気をつける」ことで改善しようとするやり方が多いように感じます。しかし、「姿勢の固定化」がある場合、このやり方は時間がかかり、うまくいきません。「姿勢の固定化」とは、特定の筋がこわばっていたり、弱くなっている状態が長く続いている状態です。この状態のままで、正しい姿勢に戻して維持しようとすること自体、たいへんなストレスがかかり、うまくいかないのです。「姿勢の固定化」の有無は〝動き〞を使って判断します
それでは、まず、立位姿勢の骨盤前傾具合から姿勢をみてみましょう。この判断には、骨盤前側の突出部(=上前腸骨棘)と後側突出部(=上後腸骨棘)を使います。横からこの突出部と突出部を結んだ線の傾きを見ます。この傾きの後ろの幅が指一本分(1㎝程度)であれば標準的な骨盤前傾具合、それより大きい場合は骨盤過前傾、それより小さい場合は骨盤後傾と判断してみてください。
続いて動いてみて、「姿勢の固定化」を確認してみましょう。ここでは、四つばい位になり、腰を反らす・丸める動きを使います。骨盤過前傾姿勢の場合、腰を反らした時痛みを感じたり、腰を丸める動きの可動域が少なくなっていたら、骨盤過前傾姿勢が固定化している可能性があります。
四つばい位になり腹部を丸める
可動域が少ない例1
背中の輪郭に直線部がある。背筋にこわばりがあるかもしれない。
可動域が少ない例2
骨盤の立ち方が少ない。腹部筋が弱いかもしれない。
また、骨盤後傾姿勢の場合、腰を丸めた時痛みを感じたり、腰を反らす動きの可動域が少なくなっていたら、骨盤後傾姿勢が固定化していると判断できます。
姿勢チェックで、骨盤過前傾姿勢や骨盤後傾姿勢と判断されても、腰を反らしても丸めても痛みがなく十分な可動域で動かせる場合は「姿勢の固定化」はないので、「正しい姿勢」に気をつけるだけで改善できるでしょう。しかし、「姿勢の固定化」がある場合は、こわばりが固定化している筋などをゆるめたり、弱くなっている筋に力がでるようにしてあげないと姿勢の改善もうまくいかないのです。このように姿勢チェックでは、姿勢だけで判断するのではなく、動きと合わせて判断することがとても重要になります。
股関節の筋と立位姿勢
標準的
前後の筋肉が適度に力を発揮し、適度に緩んでいる状態。
骨盤過前傾姿勢
⇒筋力低下があるか、筋力低下しやすい筋
⓵大殿筋 ⓶大腿二頭筋 ⓷半腱様筋 ⓸半膜様筋 ⓹深層外旋六筋など
⇒こわばり(柔軟性の低下)があるかもしれない筋
⓵腸腰筋 ⓶恥骨筋 ⓷縫工筋 ⓸大腿直筋 ⓹大腿筋膜張筋 ⓺小殿筋など
骨盤後傾姿勢
⇒こわばり(柔軟性の低下)があるかもしれない筋
⓵大殿筋 ⓶大腿二頭筋 ⓷半腱様筋 ⓸半膜様筋 ⓹深層外旋六筋など
⇒筋力低下があるか、筋力低下しやすい筋
⓵腸腰筋 ⓶恥骨筋 ⓷縫工筋 ⓸大腿直筋 ⓹大腿筋膜張筋 ⓺小殿筋など
体幹の筋と立位姿勢
標準的
前後の筋肉が適度に力を発揮し、適度に緩んでいる状態。
骨盤過前傾姿勢
⇒こわばり(柔軟性の低下)があるかもしれない筋
⓵脊柱起立筋 ⓶短背筋群など
⇒筋力低下があるか、筋力低下しやすい筋
⓵腹直筋 ⓶外腹斜筋 ⓷内腹斜筋など
骨盤後傾姿勢
⇒筋力低下があるか、筋力低下しやすい筋
⓵脊柱起立筋 ⓶短背筋群など
⇒こわばり(柔軟性の低下)があるかもしれない筋
⓵腹直筋 ⓶外腹斜筋 ⓷内腹斜筋など
出典:『スポーツ障害予防の教科書 姿勢と動きのコンディショニング』
【書誌情報】
『スポーツ障害予防の教科書 姿勢と動きのコンディショニング』
土屋真人
スポーツと姿勢は重要な関係にあり、姿勢が歪んでしまうと筋肉・柔軟性・可動域・バランスなどに影響を及ぼします。姿勢はちょっとしたことでも狂ってしまいますが、その修正方法を多くの選手は知りません。本書は姿勢を改善することでパフォーマンスをアップさせるとともに、ケガの予防にも役立つために、なぜ不調や痛みが生じるのか、どこの姿勢が狂っているのが原因なのかをわかりやすく解説し、その改善方法やトレーニングについてイラストと写真でビジュアル的に紹介します。人によって不調が生じる部分は様々です。首、肩。胸郭部、背中、腰、股関節、足、などの各部位ごとに必要な柔軟性をチェックし、不調の整え方、効果的なトレーニング、改善方法を、トレーナーを指導する体育協会理事長の著者が徹底解説する初めての一冊になります。
公開日:2024.07.02