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姿勢の歪みを正す重要ポイントは足部、骨盤部、胸郭部! 動きチェックで身体の不調を事前に改善しよう【スポーツ障害予防の教科書】

Text:土屋真人

3つの重要ポイント①足部

身体の土台となる足部の重要性

身体の土台となる足部。重力下での地球では、床(地面)と接地する足部に身体全体の動きの結果が表れます。ここでは足部を見るときに重要となる基本について解説します。
まずは足部のアーチ構造(イラスト2)です。このアーチ構造は、①母指球(母指)からかかとにかけての内側縦アーチ、②小指球(小指)からかかとにかけての外側縦アーチ、そして③横のアーチ構造である横アーチがあります。このアーチの役割には「身体全体のバランス保持」 「衝撃の吸収や緩衝」 「バネ作用による効率よい推進力の獲得」などがあります。

足部のアーチ構造【スポーツ障害予防の教科書】

この役割を最大限に発揮させるためには、かかと・母指球(母指) ・小指球(小指)の3点にバランスよく荷重すること(イラスト1)であり、3点をバランスよく使って動くことが重要です。足の裏や他の部位に痛みが生じている場合には、例えば母指球(母指)側ばかり使っているなど、偏りがある可能性があります。冒頭で述べたように足部は身体の土台です。そのため、足裏に偏ったバランス荷重や使い方があると、他の部位にも影響し、痛みや不調の要因となるのです。

3点でバランスよく立つ【スポーツ障害予防の教科書】

足裏の使い方を知るためには、足裏にできたタコ(ベンチ)やウオノメ(鶏眼)をチェックすることもおすすめです。いつも荷重する箇所の皮膚が厚くなるからです。足裏の偏った使い方は下腿骨・距骨・踵骨の配列(レッグヒールアライメント)や足首の動き(内がえしと外がえし)などにも影響します。

本来はイラスト3の標準的のような配列になっていることが望ましいのですが、先ほどの3点でバランスよく立てていないと、アライメントが回外足(内方に反る配列)や回内足(外方に反る配列)になってしまう場合もあります。かかとばかりに荷重した後ろ重心で立っていると、足指が床(地面)から浮いてしまう浮指が習慣になり、全身の配列や動きに影響を与えます。

レッグヒールアライメント【スポーツ障害予防の教科書】

さらに外反母趾や内反小趾もチェックしてみてください。母指がつけ根から外方に曲がってしまうのが「外反母趾」 。小趾がつけ根から内方に曲がってしまうのが「内反小趾」です。中足指節関節(母趾の第2関節と他の足指の第3関節)を曲げる筋は、横アーチ支持の働きも持っています。つまり足指を曲げる筋が機能しないと、横アーチが崩れやすくなるわけです。
横アーチが崩れると足幅が広くなってしまう(開帳足)ので、バランスを取るために母趾と小趾の配列が変化するのです。この見方のポイントがイラスト4で、15度を基準に見るようにします。20度を基準にして見る場合もありますが、動きケア®では未然に傾向を把握して予防するため、15度を基準にしています。足部は身体の土台であるため、足部を改善することが他の部位の不調の改善につながることがよく見られます。まずはこの土台の状態を十分に把握してください。

外反母趾と内反小趾【スポーツ障害予防の教科書】

3つの重要ポイント②骨盤部

骨盤の前後左右と腹圧がポイント

姿勢を見る際に述べた骨盤の前傾と左右の傾き、そして腹圧が骨盤部を見る際の重要ポイントになります。特に現代人は骨盤が後傾していたり、左右に傾けることができない傾向が見られます。
骨盤の前傾や左右傾けで重要になるのは腸腰筋です(イラスト1) 。腸腰筋のうち上方向に長く伸びている筋が大腰筋になります。この大腰筋はハイレベルな短距離走の選手が非常に発達していますが、体力が低下して、転倒しやすくなっている方は細くなっているようです。つまり人が活動的であるためもポイント筋のひとつなのです。さてこの大腰筋ですが、この筋が働くことで骨盤を前傾させることができます。左右の筋を片方ずつ動かすと骨盤の左右傾けができます。また、本来の骨盤の傾き具合や正しい位置を保持することにも働いています。骨盤部は身体の中心部です。その中心部が保持できないと上肢や下肢、末梢を十分に動かすことはできません。中心部がずれるとその影響は末梢にまで及ぶのです。
トレーニングや健康づくりの現場を見ていると、骨盤の左右傾けの動きはあまり重視されていないように感じます。ぜひ取り入れてみてください。

腸腰筋【スポーツ障害予防の教科書】

骨盤部でもう1つ重要なポイントが腹圧です。腹圧とは簡単にいうと
①十分にいきむことができる
②どんな動きのなかでも自然に「安定した体幹部」を保持することができる
ということです。そのためには、まず、コアと呼ばれる空間を構成する横隔膜と腹横筋、多裂筋と骨盤底筋群(イラスト2)を意識して部分的にエクササイズすることをおすすめします。

コアとは【スポーツ障害予防の教科書】

今では多くのアスリートがコアトレーニングを取り入れていることでしょう。ところが画像1のようなコアトレーニングが多く行われている一方で、上手く「腹圧」がかかる状態に結びついていない場合もあるので注意が必要です。

一般的なコアトレーニングの例【スポーツ障害予防の教科書】

一般的なコアトレーニングの例

このようなトレーニングの前に、まずは横隔膜と腹横筋、多裂筋と骨盤底筋群を意識した部分的エクササイズがおすすめ。形はできていても上手く「腹圧」がかかっていない場合もあるので注意が必要になる。

3つの重要ポイント③胸郭部

肩、首、腰の不調、呼吸にも関する胸郭部

胸郭部は胸椎(12個)肋骨(12対)胸骨(1個)の計37個の骨で構成されています。 (イラスト1) 。この胸郭部が硬くなって、十分に動かないケースが多いので注意が必要です。緊張状態では、呼吸は浅く、速くなることが知られています。ストレス過多の現代では、浅い呼吸が習慣になりやすく、胸郭部が十分に拡大・縮小する必要がなくなるため、硬くなりやすいのかもしれません。
また、胸郭部は気を抜くと丸まりやすいものです。丸まって固定化すると、肩よりも頭が前に出る頭部前方姿勢になります。そうすると、本来の頸椎部の配列である前弯がなくなってしまい、頸椎の際からでている神経を圧迫したり、挟んだりすることが起きやすくなります。 (イラスト2) 。頸椎の際からでている神経は肩や腕、前腕、手などの筋や皮膚に伸びているので、そのような部位に症状もでやすくなるのです。胸郭部が固定化すると、首、肩、腰など他部位に過度の負担をかけることになるため、十分に動くようにしておくことが重要です。

胸郭とは【スポーツ障害予防の教科書】

胸郭とは

胸郭は胸椎(12個)と肋骨(24個)胸骨(1個)の計37個の骨で構成されている部位である。

標準的な首の状態とストレートネック【スポーツ障害予防の教科書】

標準的な首の状態とストレートネック

胸郭部が丸まっていたり背中が丸々ことで頭部前方姿勢になると、首のカーブが真っすぐになってしまい、神経を挟んだり圧迫したりする危険がある。

ここで胸郭部の動きの3つのチェックをしてみましょう。1つ目は画像1のように頭を肩の前に出したり、肩の上に戻したりします。2つ目は画像2のように腰を反らします。3つ目は画像3のように手のひらを合わせて腕を伸ばし、骨盤から下を動かさずに左右へ回旋させます。
まず1つ目ですが、頭を肩の上に戻せなかったり、頸部や腰部だけが動いている場合は、胸郭部が十分に動かなくなっています。
続いて2つ目ですが、△の画像を見ると背中が丸まっています。つまり胸郭部が十分に動かないために、腰だけで反って過度な負担を与えていることになります。このように胸郭部が十分に動かないと、首や腰など他の部位に過度な負担をかけることになるのです。
最後の3つ目ですが、これは60度以上の回旋ができることが基準になります。ところが60度未満しか回旋できなければ、骨盤部や股関節に過度な負担がかかり、これらの部位に不調が出てくる場合があります。

3つの胸郭部の動きチェック【スポーツ障害予防の教科書】

3つの胸郭部の動きチェック

画像1 前後に首を動かす

イスに座り、肩よりも前に首を出したり、肩の上に戻したりする。胸郭部の動きが不十分の場合には、腰椎部がたくさん動いたり、頚椎部ばかりが動いてしまう。

画像2 立った姿勢で腰を反らせる

腰の横に手を当てて腰を反らせる。背中が伸びた姿勢で反らすことができればよいが、背中が丸まった状態でしか反らすことができなければ、胸郭部の動きが不十分。

3つの胸郭部の動きチェック【スポーツ障害予防の教科書】

画像3 手を合わせて胸を伸ばし左右に回旋

イスに座って両手のひらを合わせ、腕を伸ばして左右に回旋させる。60度以上回旋させることができればOK。それ未満の場合には胸郭部の動きが不十分。

胸郭部の固定化が影響する動き【スポーツ障害予防の教科書】

胸郭部の固定化が影響する動き

腕が十分に挙げられなかったり、胸郭部が拡大しない場合にも胸郭部がかたくなっている可能性が高くなる。

出典:『スポーツ障害予防の教科書 姿勢と動きのコンディショニング』

【書誌情報】
『スポーツ障害予防の教科書 姿勢と動きのコンディショニング』
土屋真人

スポーツと姿勢は重要な関係にあり、姿勢が歪んでしまうと筋肉・柔軟性・可動域・バランスなどに影響を及ぼします。姿勢はちょっとしたことでも狂ってしまいますが、その修正方法を多くの選手は知りません。本書は姿勢を改善することでパフォーマンスをアップさせるとともに、ケガの予防にも役立つために、なぜ不調や痛みが生じるのか、どこの姿勢が狂っているのが原因なのかをわかりやすく解説し、その改善方法やトレーニングについてイラストと写真でビジュアル的に紹介します。人によって不調が生じる部分は様々です。首、肩。胸郭部、背中、腰、股関節、足、などの各部位ごとに必要な柔軟性をチェックし、不調の整え方、効果的なトレーニング、改善方法を、トレーナーを指導する体育協会理事長の著者が徹底解説する初めての一冊になります。

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