せき
せきは本来、気道にある異物を除こうとする反応ですが、長引く慢性のせきがあるときには、肺の気虚・陰虚が関係し、せきがそれらをさらに悪化させるという悪循環になっています。陰虚、血虚の状態になっていると、夜に症状がひどくなるなど、病症により、せきの出方が違います。処方を考えるときは、痰の出方や、せき以外の症状もあわせ、よく検討することが大切です。
体質からみる肺陰虚によるせき
あまり痰は出ずむせるようなせきが出る
処方:麦門冬湯/清肺湯
口やのどが乾燥する
痰をともなわず、夜になると症状が出るようなせきです。口やのどが渇き、舌が紅くなったり、声もしわがれたりします。
このような乾燥性のせきには麦門冬湯でうるおいを。もともと肺の病気をもった人、痰がからむような人には、肺の陰を補うほか、清熱や痰を除く働きの高い清肺湯を用います。
体質からみる気血両虚によるせき
力のないせきでせき以外の症状もみられる
処方:人参養栄湯
かぜなどで体が弱っている
もともと虚弱体質だったり、病後などで体が弱っていたり、高齢者などに多い、弱々しいせきです。気血ともに虚していて、倦怠感や食欲不振など、せき以外の症状もみられます。
衰えてしまった気血を補い、消化機能と呼吸機能とを高めるよう人参養栄湯を用います。
体質からみる気滞によるせき
スッキリしないのでせきばらいをしたくなる
処方:神秘湯
肺の気の動きが滞る
長い緊張が続くと出るせきは、肺の気の流れが滞っているため、肺がすっきりせずに出ていると考えられます。神経質で、普段から呼吸が浅い人に多くみられ、すぐに、せきばらいをしたり、緊張でせき込んだりします。
神秘湯で肺気の流れをスムーズに。痰がからむときは、半夏厚朴湯もよいでしょう。
養生・セルフケア
ツボ
痰がからみのどがつまるようなときには天突を。雲門も肺にかかわる症状に効果のあるツボです。
天突
鎖骨と鎖骨の間のくぼみ。強く押すと苦しいのでやさしく。
雲門
鎖骨下、肩側のくぼみ。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝
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公開日:2024.12.26