TUBCトレーナー対談〈第2回〉! 3人体制で臨むトレーナーの役割とは?
B3参戦3シーズン目を迎えた東京ユナイテッドバスケットボールクラブ(以下TUBC)が、開幕から好調を維持している。第4節を終えた時点で5勝1敗。岩手ビッグブルズ、横浜エクセレンスに次いでリーグ3位。過去2シーズン、プレーオフに進みながら昇格を逃した悔しさをバネに、さらなる飛躍を予感させるに十分な戦いぶりだ。開幕3戦目の岩手戦では本拠地・有明アリーナに今シーズンのB3最多観客となる9385人を動員。『ラブすぽ』ではそんなリーグ屈指の人気を誇るTUBCに密着取材を実施!今回はチームを土台から支えるヘッドトレーナーの田村亜有さん、トレーナーの松本奈々さん、大隅公平さんの3人に話を聞いた。
【全2回の第2回】
――B3では異例の「トレーナー3人体制」を敷くTUBCですが、具体的にどんな業務を行っているのでしょうか?
田村 もちろんチームにとって全然違うと思うのですが、TUBCの場合は「選手の体に関わること全般」です。ドリンクやサプリメントも含めた口にするものの管理からケガをしたときの対応、疲労を取るためのメンテナンス、コンディションを上げるためのトレーニングのサポート、筋肉量も含めた体重の管理などです。
――かなり多岐にわたりますね。食事面も細かく管理されるのですか?
田村 食事に関しては、選手にもそれぞれ家庭があったりするので、そこまで厳密な管理はできていません。もちろん、脂肪量などはチェックして体重を減らさなければいけない選手へのアドバイスなどはするんですけど、ある程度「自己管理」の範疇で任せています。
あまりにも管理し過ぎると逆にストレスになってしまうケースもあるので、塩梅はむずかしいです。チームによってはそれこそ食事の写真を送ってチェックするようなところもあるみたいですが、TUBCの場合はそこまで徹底させず、選手に任せる部分は任せながら、「ココだけは気をつけて」という部分をサポートするイメージです。
――多岐にわたるトレーナーの仕事ですが、どんな部分で「やりがい」を感じますか?
松本 トレーナーとしてやったことに対して、選手から反応が返ってきたときですね。たとえば選手が試合に出る前に「ココがちょっと痛い」と言ってきたときにトレーナーとしてケアをする。その試合で選手が得点を決めてくれたり、活躍してくれると「やってよかったな」と実感します。どんな些細なことでも、自分の仕事が少しでもチームの、選手のプラスになれたと感じれたときが、一番やりがいを感じますね。
大隅 奈々さんが言ったことと被る部分もあるんですけど、選手が試合でしっかりと結果を残してくれたり、チームの勝利に貢献できた時はすごくうれしいです。あとはシンプルに日常の中で選手から「ありがとう」と声をかけられるだけでもモチベーションは上がります。それはトレーナ業務以外の雑用的な仕事でも同じですね。
田村 奈々ちゃんと公平が言ってくれたことがある意味で「すべて」ではあるんですけど……(笑)。もう少し具体的にお話しするとすれば、バスケは毎週末試合がある中で、どうしてもケガがあるスポーツ。トレーナーとしてはまず、翌週に選手が試合に出られる状況を作るのが仕事です。もちろん、ケガの大小でやれる、やれないという部分は大きく変わってくるんですけど、次の週じゃなくてもあきらめずにケアをすることで選手がしっかりとプレーできる状態まで回復できた時、コートに立ってくれた時は、トレーナーとしてすごくやりがいを感じることができます。チームの勝利に貢献するのは決してコーチや選手だけでなく、「私たちも勝利にかかわっている」と思えることは、誇りでもあります。
――逆につらいことは?
田村 それはいっぱいあるよね?(笑)
松本 そうですね……(苦笑)。さっき言ったこととは逆に「乗り越えられなかった時」ですね。たとえばケガに対してのアプローチでも自分の実力不足で選手が思ったように回復できなかったり、コンディションが上がらなかった時は、トレーナーとしてもかなりダメージがあります。
大隅 僕はまだ入ったばかりですけど、やはり自分の実力が足りないと感じたときは辛いですね。特に「バスケットボール」に関しての知識はまだまだ不足しているので、そのあたりは先輩にもいろいろと聞くようにしています。
田村 私は肩書が「ヘッドトレーナー」なので、なにかを判断しなければいけない局面が多いんですね。そういう時は奈々ちゃん、公平にもいろいろと情報をもらって、決めるようにしています。
――「判断」というのは具体的に言うと?
田村 一番は試合に「出られるか」「出られないか」の部分です。選手の立場からすると、みんな「出たい」はずなんです。でも、そこでストップをかけるのもトレーナーの仕事。プレーできるのか、ここは少し我慢すべきなのか……選手の状態やチームの状況なども考えながら決めなければいけないので、むずかしい決断になることも多いです。
――実際に選手が「出たい」と言ってもトレーナーのみなさんが止めることもある?
田村 それは、よくあります。特に、宮田(諭)さんは……(笑)。大ベテランなので、「俺はこれで引退してもいい」と言われることもあるんですけど、トレーナーとしては当然少しでも長くプレーしてもらうために仕事をしています。ただ、ベテランだからこそ分かる「感覚」みたいなものも当然あって、長いキャリアから「これならいける」と判断している場合もあるんです。宮田さんに限らず選手たちはそういう自分だけが分かる感覚も持っているので、トレーナーとしては頭ごなしに「ダメ」とは決めずに選手の感覚も聞きながら判断するようにしています。
――最後に、トレーナーとしての今後の抱負・目標を聞かせてください。
松本 これはもう、トレーナーとか関係なく、「B2昇格」です。私も、少しでもその力になれるように頑張ります。
大隅 プロのチームで働くのは初めてなんですけど、そこで「B2昇格」を味わいたいと思います。先輩方にいろいろと教わりながら、選手たちをサポートしていきたいです。
田村 やるからには勝ちたいですし、チーム1年目から一緒に戦っている一員として、また来シーズンは「昇格」がないので、ラストチャンスの今シーズン、ぜひチームのみんなと「B2昇格」喜び合いたいです。
――ありがとうございました!
写真・TUBC提供
文・花田雪
公開日:2024.11.03