ワインの香りを感じる
この段階は、それぞれのワインのたのしさや個性があらわれるため、重要なステップだ。嗅覚は味覚に比べて約1万倍も鋭敏。ワインのなかには500以上ものアロマ(揮発性分子)が含まれている。
テイスティングで最初につかうのは「鼻」
「アロマ(香気成分/こうきせいぶん)」とは小さくて軽い揮発性の香りの分子で、判断の誤りを避けるため、ワインには人工的なアロマは加えない!
ワインの香りを感じるとは?
ワインのにおいをかぎ(直接香気)、味わう(口腔香気/くうこうこうき)ことで、アロマを感じることができる。
直接香気
香りといえば、鼻腔からかぐのが一般的だ。これを「直接香気」または「オルソネイザル」と呼ぶ。
口腔香気
一部のアロマは口腔からも感じられる。特定の分子が口で温められてガスとなり、鼻へとのぼって、アロマとして知覚される。
アロマを感じるコツ
グラスのステムを持って、鼻に近づける。まずグラスを揺らさずに、アロマをかぐ。このときにもっとも軽い第1アロマが感じられる。次にグラスを何度かまわしたのち、第2アロマをかぐ。
ワインのアロマはどこからくる?
レザーやサクランボ、バニラ、フレッシュなハーブ。これらはどれもワインのアロマの比喩だ。なぜワインにはこれほど多様なアロマ
が自然に備わっているのだろう。ブドウ品種の性質によるところが大きいが、そのほかにもブドウと環境の相互作用や気候、生産年、ブドウ樹の栽培方法、醸造方法、保管方法も影響している。そして、図からもわかる通り、鼻はワインについてさまざまなことを教えてくれる。
アロマには強弱がある
アロマの強弱は実に多様だ。ひかえめなアロマもあれば、ゲヴュルツトラミネールなど表現力の豊かなブドウ品種からつくられたワインのように、ごく強烈なアロマもある。「閉じた」ワインと呼ばれるものでも、数年カーヴで保存したりカラフに移したりすると、香味が開き、強烈なアロマがあらわれる場合がある。
第1アロマ、第2アロマ、第3アロマとは
第1アロマ
ブドウ品種に由来する特徴的なアロマ。フローラル(花)、フルーティー(フルーツ)、スパイシー(スパイス)、植物系、鉱物のようなアロマ。
第2アロマ
醸造、正確にいえば発酵過程からくるアロマ。発酵前アロマ、酵母やパンなどの発酵アロマ、浸しん漬し アロマがある。フルーツキャンディーのような、アルコール発酵の副産物である香気成分のアミルアルコールの香り、新鮮なバター、キャラメル、牛乳、ヨーグルトのような乳酸発酵による香りも特徴的だ。
第3アロマ
ワインの熟成や変化に伴って生まれるアロマ。オークなど樽の木材に由来するアロマはバニラや木、バルサミコビネガーを思わせる。またドライフラワーといった花や、ドライフルーツ、長期熟成することで生じる独特のランシオ香*、スパイス、動物のほか、焙煎(ばいせん)やグリルやキャラメルのようなこげ臭、トリュフやキノコ、森の下草といった植物のようなアロマもある。
*過熟したフルーツの香りやこげ臭。
欠陥があると残念な結果になることも……
コルク臭(ブショネ)
コルク臭(ブショネ):もっとも一般的な欠陥。たいてい質の悪いコルク栓か、コルクの防腐剤としてつかわれる物質が微生物に代謝されることによってトリクロロアニソールが発生し、異臭(オフフレーバー)の原因となる。
酸化
酸化:亜硫酸無添加による劣化、または古くなったワイン。マデイラ酒のような酸化した香り、過熟リンゴのようなにおいがする。
還元臭
還元臭:発酵後のワインは、酸素供給が制限された状態が続くと還元状態となり、硫化水素からメルカプタン類が生成される。こもったにおい、腐った卵、玉ねぎのようなにおいがする。
ビネガー臭
ビネガー臭:酢酸菌がアルコールを酸化させることによって酢酸が生成し、ワインが劣化することが原因。
ワインのアロマ
ワインは、さまざまなアロマのタイプで分類することもできる。ワインの色やスタイルにもよるが、フルーティー、フローラル、スパイシーといったアロマがある。
白ワインのアロマタイプ
若いワインと熟成ワイン
ワインの熟成年を基準にした分類では、ワインの成長具合に主眼が置かれる。第1アロマと第2アロマが優勢のワインはたいてい「若い」とされ、第3アロマが優勢のワインは「熟成した」とされる。「若い」と「熟成した」のあいだには、いくつもの細かい段階がある。
ロゼワインのアロマタイプ
赤ワインのアロマタイプ
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気になる中身を少しだけご紹介!ワインのスタイルによってブドウの収穫タイミングが変わる!手摘みと機械の収穫ではどう違うのか?
収穫に適した最良のタイミングって?夜間収穫もある?
ブドウが熟したら、収穫のはじまりだ。収穫は手摘み、または機械で行う。開花してから100日ほどで収穫に入るが、ブドウの成熟度と目標とするワインのスタイルによって、収穫のタイミングを決める。収穫日の決定は難しく、責任重大だ。はやすぎると、実が酸っぱく、糖分の含有量も低い。遅すぎれば、過度に成熟して酸味が足りず、糖度がごく高くなるほか、灰色カビ病に感染するリスクもある。栽培者は時間をかけて天気予報をチェックし、ベストなタイミングを見きわめる。
手作業で収穫するのは負担が重く、時間もかかるが、格の高いアペラシオンや、アクセスしにくいブドウ畑や丘陵、特殊な醸造法を必要とするブドウでは手摘みがふつうだ。たとえば、極甘口ワインに用いる貴腐菌ボトリティス・シネレアのついたブドウは、手摘みと決まっている。シャンパーニュなど一部のアペラシオンの規定でも、収穫は手摘みとされている。手摘みには、摘む人と運ぶ人のチームワークが重要だ。摘む人は剪定ばさみで注意深く房を切り、ケースなどに入れる。運ぶ人は背負いカゴにブドウを入れて列の端まで運び、ケースなどに入れる。ケースならそのままトレーラーに乗せて、醸造所まで運んでいける。
新鮮さを保つため、月と星の明かりのもとライトをつけながら収穫することを夜間収穫という。冷気がブドウの酸化を防ぎ、実に含まれるフレッシュさやフローラルなアロマをあますところなく守ってくれるのだ。
機械収穫は手摘み収穫となにが違う?
収穫機はブドウ収穫のために設計された機械で、1回で収穫のすべての作業を行う。ブドウ樹の列をまたいで進み、振動作用を利用して作業する。機械から支柱とブドウ樹に振動を伝えることで、実がふり落とされるというわけだ。ただし、すべての品種が機械収穫に向いているわけではない。
収穫機が登場したのは1970年代。効率的に収穫できるのが強みで、実が樹になったまま腐るなどという事態を防げる。また夜間にもつかえるので、ブドウの鮮度を保ちやすい。経済面でも機械は文句なしに優秀。機械収穫されたブドウはクオリティが劣ると、まことしやかにいわれているが、新世代の機械なら、しっかり調整して準備をしておけば、抜群のはたらきをしてくれる。
世界中のワインをもっと深堀り!プロヴァンス地方のワインの魅力とは?
ロゼワインといえば、明るいピンク色が特徴だが、プロヴァンス地方のロゼワインは、洗練されたニュアンスの繊細な色あいだ。微妙な色調をあらわすのにつかわれるのは、スグリ、モモ、グレープフルーツ、メロン、マンゴー、マンダリンオレンジなどフルーツの名前だ。
南仏バンドールのワインは気候を活かして作られた!ロゼワインのピンク色はどこからくる?
バンドールのブドウ畑は、サント・ボーム山塊から地中海沿岸にかけ、自然がつくり出した石の積まれた段丘のレスタンクに広がっている。生産者たちは何世紀もかけて、丘陵を開墾してブドウ樹を植えた。海に面した南向きの畑は、年間を通してたっぷりと陽光を浴びる。バンドールの赤ワインは、おもにムールヴェードルからつくられている。ゆっくりと熟すムールヴェードルは、このアペラシオンの中心品種で、アサンブラージュの50%以上を占め、グルナッシュとサンソーをあわせてつかう。前者はボリューム感を、後者は繊細さをもたらす。ワインは長期熟成型で力強く、しっかりとした骨格で、ドライハーブやスパイスのアロマを備えている。
ロゼワインの醸造では、黒ブドウの果皮を漬け込むため、色素が果汁に溶けてピンク色になる。つまり、色はタンク内での果皮と浸漬時間、温度、ほぼ無色の果汁と果皮の接触度に左右される。現在のトレンドは淡いピンク色。ロゼワインの色とクオリティに相関関係はないが、ビジュアルは重要で、選択基準の1つにもなる。淡い色のロゼワインは、より酸が生き生きとしてアロマが豊かだ。濃い色のロゼワインには、上質なメイン料理とあう高品質のものもある。
★ワインを観察してみよう
★各種ワインの醸造法とは?
★料理との組み合わせを知ろう
★フランスだけじゃない!世界のワインとは?
などなど気になるタイトルが目白押し!
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【書誌情報】
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すぐれたワインはなにが違う?どうやってアロマは生まれる?どうすればアロマを見きわめたり表現したりできる?ワインの特徴や、クオリティが生まれる仕組みも図解だからとってもわかりやすく、簡潔。各章末には、それまで学んだことをベースにトライできるテイスティングレッスンを用意しています。テイスティングのためのワインもしっかり紹介。学んだことが、ワインにどんな違いを生むのかあなたの舌でたのしく復習しましょう。すきま時間にぴったりのテストもあります。この本が、シンプルな「好き」「嫌い」をこえてあなたのテイスティングのアプローチを新たな次元へと導いてくれるはず。
公開日:2023.06.18