ワインのクオリティを評価する
ここまでは、ワインを描写し、外観を見て、香りを感じ、味わい、バランスを確認してきた。欠陥がないとなれば、いよいよクオリティ評価の段階だ。ポイントは、客観的な評価基準と個人的な好みを混同しないこと。たとえば2人でテイスティングしたときに、クオリティについての客観的判断は同じでなければならない。
ワインの5つの客観的な判断基準
ワインのバランス
すべてが調和していなければならず、繊細な香味バランスが問われる。評価対象となるアルコール度やアロマ、酸味、タンニン、甘味の各要素がしかるべき位置に収まり、ほどよく、主張しすぎず、ほかの要素と調和し、全体にうまく溶け込んでいるかどうかがポイントだ。
アロマの力強さ
ワインは香りが高ければ高いほど力強い。力強いアロマはワインのクオリティを左右する。グラスに鼻を近づけなくてもアロマが感じられれば、かなり力強いということになる。鼻を近づけても香りがあまり感じられなければ、軽めのアロマということになる。
アロマの複雑さ
ワインから感じられるさまざまなアロマが複雑さを構成する。アロマが多様であればあるほど、ワインのクオリティも高いといえる。1つか2つの単純なアロマしかないワインは退屈だ。ハイクオリティのワインには、豊かなアロマのニュアンスがある。ワインによっては、まだ若くて潜在的なアロマが引き出されていないものもあるが、その凝縮したアロマには将来性が感じられる。
アロマの持続
飲んだあと、または吐き出したあとにも、まるでワインが残っているかのように、長いあいだアロマが感じられることがある。すぐれたワインのアロマは長く持続する。逆に、平凡なワインの余韻は短い。
個性
個性は「ティピシテ」とも呼ばれる。個性の概念は、重要でありながら定義が難しい。すぐれたワインには独自の性質があり、おもにブドウ品種と生産地に由来する。たいていのワインはブドウ品種とテロワールが反映されていなければならず、同じブドウ畑でも一様に同じ個性のワインができるわけではない。また、個性と標準規格にあわせることは別物だ。個性は変化し、気候の影響を受け、年ごとに異なる。中程度のクオリティのワインは、どこで生産されたか、どのブドウ品種からつくられているかがはっきりしない。すぐれたワインはそうした要素を表現することができる。
ワインのクオリティレベルの判断
クオリティの5つの客観的判断基準を見てきた。これらにそって整理してみよう。
「すばらしい」レベルのワイン
「すばらしい」レベル:5つの基準が満たされている場合
「とてもよい」レベルのワイン
「とてもよい」レベル:4つの基準が満たされている場合
「よい」レベルのワイン
「よい」レベル:3つの基準が満たされている場合
「並」のレベルのワイン
「並」のレベル:2つの基準が満たされている場合
「並以下」のレベルのワイン
「並以下」のレベル:1つの基準が満たされている、または1つもあてはまらない場合
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気になる中身を少しだけご紹介!ワインのスタイルによってブドウの収穫タイミングが変わる!手摘みと機械の収穫ではどう違うのか?
収穫に適した最良のタイミングって?夜間収穫もある?
ブドウが熟したら、収穫のはじまりだ。収穫は手摘み、または機械で行う。開花してから100日ほどで収穫に入るが、ブドウの成熟度と目標とするワインのスタイルによって、収穫のタイミングを決める。収穫日の決定は難しく、責任重大だ。はやすぎると、実が酸っぱく、糖分の含有量も低い。遅すぎれば、過度に成熟して酸味が足りず、糖度がごく高くなるほか、灰色カビ病に感染するリスクもある。栽培者は時間をかけて天気予報をチェックし、ベストなタイミングを見きわめる。
手作業で収穫するのは負担が重く、時間もかかるが、格の高いアペラシオンや、アクセスしにくいブドウ畑や丘陵、特殊な醸造法を必要とするブドウでは手摘みがふつうだ。たとえば、極甘口ワインに用いる貴腐菌ボトリティス・シネレアのついたブドウは、手摘みと決まっている。シャンパーニュなど一部のアペラシオンの規定でも、収穫は手摘みとされている。手摘みには、摘む人と運ぶ人のチームワークが重要だ。摘む人は剪定ばさみで注意深く房を切り、ケースなどに入れる。運ぶ人は背負いカゴにブドウを入れて列の端まで運び、ケースなどに入れる。ケースならそのままトレーラーに乗せて、醸造所まで運んでいける。
新鮮さを保つため、月と星の明かりのもとライトをつけながら収穫することを夜間収穫という。冷気がブドウの酸化を防ぎ、実に含まれるフレッシュさやフローラルなアロマをあますところなく守ってくれるのだ。
機械収穫は手摘み収穫となにが違う?
収穫機はブドウ収穫のために設計された機械で、1回で収穫のすべての作業を行う。ブドウ樹の列をまたいで進み、振動作用を利用して作業する。機械から支柱とブドウ樹に振動を伝えることで、実がふり落とされるというわけだ。ただし、すべての品種が機械収穫に向いているわけではない。
収穫機が登場したのは1970年代。効率的に収穫できるのが強みで、実が樹になったまま腐るなどという事態を防げる。また夜間にもつかえるので、ブドウの鮮度を保ちやすい。経済面でも機械は文句なしに優秀。機械収穫されたブドウはクオリティが劣ると、まことしやかにいわれているが、新世代の機械なら、しっかり調整して準備をしておけば、抜群のはたらきをしてくれる。
世界中のワインをもっと深堀り!プロヴァンス地方のワインの魅力とは?
ロゼワインといえば、明るいピンク色が特徴だが、プロヴァンス地方のロゼワインは、洗練されたニュアンスの繊細な色あいだ。微妙な色調をあらわすのにつかわれるのは、スグリ、モモ、グレープフルーツ、メロン、マンゴー、マンダリンオレンジなどフルーツの名前だ。
南仏バンドールのワインは気候を活かして作られた!ロゼワインのピンク色はどこからくる?
バンドールのブドウ畑は、サント・ボーム山塊から地中海沿岸にかけ、自然がつくり出した石の積まれた段丘のレスタンクに広がっている。生産者たちは何世紀もかけて、丘陵を開墾してブドウ樹を植えた。海に面した南向きの畑は、年間を通してたっぷりと陽光を浴びる。バンドールの赤ワインは、おもにムールヴェードルからつくられている。ゆっくりと熟すムールヴェードルは、このアペラシオンの中心品種で、アサンブラージュの50%以上を占め、グルナッシュとサンソーをあわせてつかう。前者はボリューム感を、後者は繊細さをもたらす。ワインは長期熟成型で力強く、しっかりとした骨格で、ドライハーブやスパイスのアロマを備えている。
ロゼワインの醸造では、黒ブドウの果皮を漬け込むため、色素が果汁に溶けてピンク色になる。つまり、色はタンク内での果皮と浸漬時間、温度、ほぼ無色の果汁と果皮の接触度に左右される。現在のトレンドは淡いピンク色。ロゼワインの色とクオリティに相関関係はないが、ビジュアルは重要で、選択基準の1つにもなる。淡い色のロゼワインは、より酸が生き生きとしてアロマが豊かだ。濃い色のロゼワインには、上質なメイン料理とあう高品質のものもある。
★ワインを観察してみよう
★各種ワインの醸造法とは?
★料理との組み合わせを知ろう
★フランスだけじゃない!世界のワインとは?
などなど気になるタイトルが目白押し!
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【書誌情報】
『エコール・デ・ヴァン・エ・スピリテューの一生に一冊はもっておきたいワインの教科書』
エコール・デ・ヴァン・エ・スピリテュー 著/奥山久美子 監修
エコール・デ・ヴァン・スピリテューはワインの本場、フランス・パリに本拠を置く人気のワイン専門学校。体系的メソッドにもとづくグランド・テイスティングコースから生まれた本書では、パリの授業をまるごと基本からあらゆるワインの紹介までまとめています。さあ、さっそくテイスティングをはじめましょう。実践重視の学校らしい、テイスティングの視点からぜひ試してほしいワインが満載。フランスは圧巻の充実ぶり、ニューワールドもていねいに紹介します。
すぐれたワインはなにが違う?どうやってアロマは生まれる?どうすればアロマを見きわめたり表現したりできる?ワインの特徴や、クオリティが生まれる仕組みも図解だからとってもわかりやすく、簡潔。各章末には、それまで学んだことをベースにトライできるテイスティングレッスンを用意しています。テイスティングのためのワインもしっかり紹介。学んだことが、ワインにどんな違いを生むのかあなたの舌でたのしく復習しましょう。すきま時間にぴったりのテストもあります。この本が、シンプルな「好き」「嫌い」をこえてあなたのテイスティングのアプローチを新たな次元へと導いてくれるはず。
公開日:2023.06.22
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