国の対立は「貿易しやすい土地」をめぐって起こる【図解 地理と経済の話】
ロシアは凍らない海運ルートがほしかった!?
国家間の争いの理由は、価値観や文化の違いなどさまざまですが、資源ルートの確保をめぐって対立することがあります。
たとえば、2022年から戦争状態が始まったロシアとウクライナです。両国の争いの発端としては歴史観やイデオロギーの対立もありますが、地理的な視点を踏まえると、資源ルートをめぐる争いが浮き彫りになってきます。
一般的に広大な土地を持つロシアという国は、石油や天然ガス、石炭をはじめとしたエネルギー資源を多く持っているうえ、森林や鉱物などの天然資源も豊富な大国として知られています。しかしながら、冬になると北極海とオホーツク海が凍って、ロシアは海運が使えなくなってしまうのです。
2014年、ロシアが国際世論を無視してウクライナのクリミア半島を併合したのは、冬でも凍ることのない黒海を手にすることで、海運ルートを確保したかったためといわれています。
ちなみに、ウクライナにはチェルノーゼムと呼ばれる肥沃な穀倉地帯があり、小麦の生産量はロシアよりも勝っています。隣り合う国なのに生産量に違いが生じるのは、ロシアが寒冷地だから。ロシアは広く大きな国土を持ってはいるものの、なかには農地に適さない土地も多く含まれているというわけです。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 地理と経済の話』
著者:井田仁康
著者プロフィール
井田仁康:筑波大学名誉教授。博士(理学)。1958 年生まれ。日本社会科教育学会長、日本地理教育学会長などを歴任し、日本地理学会理事。筑波大学第一学群自然学類卒。筑波大学大学院地球科学研究科単位取得退学。社会科教育・地理教育の研究を行っている。著書や編著書に『読むだけで世界地図が頭に入る本』(ダイヤモンド社)、『世界の今がわかる「地理」の本』(三笠書房)などがある
累計300万部突破!『眠れなくなるほど面白い図解シリーズ』経済ジャンル最新刊、世界のニュースもお金の流れも、地理がわかればもっと面白い!『地理と経済の話』
昨今、地理的条件から政治を分析する「地政学」が注目を集めています。国土の形や立地、隣国との位置関係や気候などから、政治的・軍事的な影響を研究する学問で、世界情勢を紐解くうえで欠かせない考え方といえます。実は、地理は政治だけでなく、経済にも大きく関わっています。一見繋がりが見えにくい地理と経済の話ですが、
・インドでIT産業が特に発展したのはなぜ?・天然資源に恵まれたアフリカがなかなか成長できなかったのはなぜ?・中国やインドに続いて今後さらに伸びていく国はどこ?・中東で大量の石油が採れるのはなぜ? これらはすべて「地理」で説明ができます。今の世界情勢からこの先世界がどう動いていくかまで、世の中の流れがわかるようになる「経済地理学」が面白く学べる一冊です!
公開日:2024.10.03