Q 水を木のてっぺんまで吸い上げる方法は?
A 4つの「フォース」を使えば、高さ100mなんて軽い
数十mという背の高い樹木を眺めていると、不思議な思いに駆られます。
「ポンプもないのに、水はどうやっててっぺんまで運ばれているのだろう?」
水が届いていなければ、てっぺんは枯れているはずですが、そんな様子は見られません。
「それならば、樹木はどこまで背が高く伸びるのだろう?」
という新たな疑問がわいてきます。こればかりは、理論的な予言はまず不可能です。自然は人間の理論をあざ笑うかのように、とんでもない事実を突きつけてくるからです。
一般にいわれていることは、水は4つの力で植物体のすみずみまで届けられるということです。
①根が地中から水を吸い上げる力(根圧)
②水の通り道、導管の中での「毛細管現象」
③ 葉の気孔から光合成などでできた過剰な水分を「蒸散作用」で吐き出す力
④ 水分子同士がどこまでもつながり続けようとする「凝集力」などです。
これら4つの力がうまくかみ合い、その総合力で水が植物体全体に行き渡るというものです。
2006年、アメリカ・カリフォルニア州のレッドウッド国立公園で、類を見ないほど背の高い3本のセコイアスギが発見されました。
いちばん背が高い木は、115mを超えていることがわかりました。これが現在最高記録の木で、ギリシア神話の神々の一人の名、「ハイペリオン」と名付けられました。
樹齢は約600〜800歳、人間ならば20歳くらいに相当するそうです。ということは、これからまだまだ背が伸びる可能性があります。
100mも水を吸い上げる仕組み
①根圧
土の中の水分は、浸透圧の差によって植物の根に吸い込まれる。
②毛細管現象
導管は細いので、水は自然と上昇していく。
③蒸散
葉の裏から水分を吐き出す蒸散の作用は、幹の中の水の上昇にも影響している。
④凝集力
水分子がとぎれずにつながろうとする凝集力は、植物のすみずみまで水分を行き渡らせる力の源。
このサバイバル術がすごい!
4つの力が総合することで、水は木のすみずみまで行き渡る。現在の樹木の高さの最高記録 は、115m 以上だが、いつ更新されても不思議ではない。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』監修:稲垣栄洋
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 植物の話』
監修:稲垣栄洋
シリーズ累計300万部突破の大ヒット「眠れなくなるほど面白い」図解シリーズに、【植物学】が登場!
色仕掛け、数学の応用など、生き残りをかけた植物のたくみな戦略を徹底解説。
図とイラストで、ひとめで植物の生態としくみがわかります。
読めば、「ふだん見かけるあの植物に、そんな秘密が!?」と驚くはず。
「花の女王はバラ、では雑草の女王は?」「なぜ夏の木陰はヒンヤリするのか?」
「昆虫と植物は必ずギブ&テイクの関係なのか?」「植物は数学を知っている?」
「じつは、植物によって光合成のしかたが違う?」
など身近な疑問から、花粉を運ばせるための昆虫だましテクニック、
一歩踏み込んだ光合成のしくみまでわかりやすく紹介します。
監修は、植物学者・静岡大学教授の稲垣栄洋先生!
植物たちの巧みな戦略とたくましい生き様が見える一冊です。
公開日:2025.02.21
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