ゲノム編集は食糧問題も解決できる
丈夫で早くたくさんできる食品を
人口増加や温暖化の影響で、世界的な食糧不足が問題になっています。とくに自給率が低い日本は待ったなしの状況で、早急な解決策が求められています。食糧不足を解消するには、気候の変化に影響されにくく、病虫害に強く、栄養価が高く、食べる部分が多い食品を、早くたくさんつくることが必要です。ここでも、ゲノム編集が威力を発揮します。
イギリスではゲノム編集によって、鳥インフルエンザにかかりにくいニワトリを開発しました。このニワトリが普及すれば、集団感染を予防でき、大量のニワトリを殺処分することもなくなります。
日本では現在、ゲノム編集によって、芽や皮に毒をもたないジャガイモや、雨に強いコムギ、収穫量の多いイネ、血圧を下げたりリラックスさせる機能のあるアミノ酸GABAを多く含んだトマトなどが開発されています。卵アレルギーの子どもも食べられる卵がつくられ、その卵に薬の成分を加えることにも成功しています。GABAトマトや肉厚なマダイ、成長の早いトラフグは、すでに販売されていて、ジャガイモをはじめ、ほかの食品も実用化が待たれているところです。
これまでは30年かかった品種改良が、ゲノム編集なら2〜3年でも可能です。今後もさまざまな品種改良が行われ、食糧問題の解決につながっていくことと思われます。
アレルゲンの少ない卵、インフルエンザに強いニワトリ
世界初のニワトリのゲノム編集は日本。アレルゲンの少ない卵の開発に成功。イギリスでは、鳥インフルエンザにかかりにくいニワトリが誕生した。
ゲノム編集で収穫量の多いコムギに改良
コムギは収穫時期に雨にあたると穂についたまま芽が出て、デンプンやタンパク質が分解され食用には向かなくなる。この問題をゲノム編集が解決。濡れても発芽しにくいコムギが登場した。
水産業不振を解消する魚のゲノム編集
水産業界のゲノム編集にも、目を見はります。筋肉の増加や成長を止める遺伝子の機能をなくして、通常の 1.2 倍の重さになった “肉厚マダイ” をつくったり、プリプリ食感の “22 世紀ふぐ ”、おとなしく養殖しやすいサバやマグロなどが開発されています。一般的な品種よりも成長が圧倒的に早いので、効率的かつ経済的。味もよいといわれます。
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』
著:高橋祥子
『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』は、生命科学の基本概念を分かりやすく解説した書籍です。生命科学は、生物の構造や機能、進化などを研究する学問ですが、専門的な知識が必要で、難しく感じることも多い分野です。しかし、この本では、豊富な図解やイラストを使い、専門用語や複雑な内容をわかりやすく噛み砕いて説明しています。
特に、DNA、遺伝子、進化、免疫など、私たちの体や生命現象に関わる重要なトピックを、科学的な視点から解説しつつ、日常生活に関連づけて説明しています。初心者でも理解できるように配慮されており、難解なテーマでも「なるほど」と納得できる構成になっています。この本は、生命科学に興味があるけれども専門的な知識がない方、または生物学を学んでいる学生など、幅広い読者におすすめです。
公開日:2024.10.13