争う期間が長くなると不測の事態も起こってくる
戦争は長期化を避け、速戦即決を心がけなければならない。そもそも戦争では、軍の装備を整えるだけでも莫大な費用を要する。必要な人数を集め、戦車や武具・武器を用立て、兵糧や飼い葉も充分集めなければならない。
それでいて、ようやく出征にこぎつけたところで対陣が長引けば、費用がさらにかさむだけでなく、将兵の疲弊も大変なものとなる。国庫事情についても同様で、場合によっては破綻の恐れさえある。
未練がましく長期戦を続ければ、不測の事態も起こりかねない。なんといっても気がかりなのは、それまで中立であった諸侯の動向である。疲弊しきった様子を見て、ここぞとばかり兵を挙げ、いつ攻め寄せてこないとも限らないのだ。
そうなっては、どんな智謀の士でも有効な対策を施すことはできず、大敗を喫するか、屈辱的な条件での講和を余儀なくされる。
そんな醜態を避けるためにも、長期戦は絶対に不可。戦うのであれば速戦即決に限るのである。
ゆえに戦争に限らず、争い事に勝利するためであれば、多少拙いところがあっても目をつむり、迅速に切り上げるのが得策である。
負けてしまっては元も子もないのだから、勝ちかたは二の次とする。譲歩のしすぎと思われる講和でも、場合によっては早期に受諾するのが賢明という場合もあるのだ。
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 孫子の兵法』
著者:島崎晋
新紀元前500年頃、孫武が勝負は運ではなく人為によるとし、その勝利の法則を理論化した兵法書。情報分析や見極め、行動の時機やリーダー論等、現代に通じるものとして今も人気が高い。「名言」を図解でわかりやすく紹介する。
公開日:2021.08.25