バックスイングは2つの独立した動作の集合体
バックスイングでゴルファーが行っているのは、胴体の右回転と腕の上昇運動です。この2つの動作をそれぞれ別々に行っています。
一連の動作じゃないの? と思われるかもしれませんが、そうとらえると正しい動きを身に付けるのは難しくなります。なんとなく右に回転し、なんとなく腕を上昇させればバックスイングになると考えてしまうと、どちらも中途半端になりますし、曖昧さの中でバックスイングの動作を覚えることになり再現性も悪くなります。
たとえばダンスを覚えるときには、1つ1つのステップを別々に覚えてそれをつなげていくそうです。つなげていくと、それらがあたかも一連の動作のように見せることができるけれども、学んでいく過程では1つ1つ習得していくということなんです。
ピアノも最初から通しで曲を弾けるわけではなくて、短いフレーズを細切れにして練習して、やはりそれをつなげていくそうです。
ゴルフスイングも同じで、体の回転運動と腕の振り上げ動作を独立した動きとして覚え、それらを組み合わせたものがバックスイングだと理解するといいでしょう。別々の運動を組み合わせるからこそタイミングがずれたり、と言った難しさも出てくるのです。
プロのダンサーが社交ダンスを踊っているのを見たからと言って「なるほど、ああやって踊るのか」と理解はできても、実際に踊ることは絶対にできません。ステップはどう踏んでいるのか、手はどう動かしているのか、それらを細かく別々に覚え、反復し、つなげていく作業が絶対に必要なのです。
バックスイングを構成する2つの動作のうち、まず右回転から説明しますと、前傾角度が維持されながら胴体が90度回転するとき、ねじれのトルクが主に脚にかかります。右の股関節に乗っているという感覚があると同時に、右脚の太
腿、ふくらはぎ、右足首にテンションがかかり、右脚全体のラインとしては傾いて首の付け根を向いています。
これは重心移動を伴うダウンスイングの動作に入りやすくなるための傾きで、もしこの傾きがなくなってしまうと、バックスイングで安定した状態になってしまい、ダウンスイングの動作にスムーズに移行できなくなります。
次に腕の上昇運動を細かく見ていきましょう。アドレスからクラブが9時の位置に来たとき、グリップの高さは変わっていませんが、クラブヘッドは約50センチ上昇しています。これはつまり左手の縦コック動作が行われたということですね。
この後、行われるのは、右ヒジのたたみを伴いながらの上昇運動ですが、このとき右腕が外旋することによってクラブフェースを開く動作が行われます。
目安となるガイドラインを示しておきますと、アドレスから8時の位置までは手と腕としては何も行われず、このときクラブフェースの向きは前傾角度と一致します。ここから左手の縦コックが入り、右腕の外旋運動でフェースが開かれながら腕が上昇していきます。
つまり「腕の単独上昇」「左手の縦コック」「右腕の外旋運動」の3つが同時に行われているということです。これに「胴体の右回転」が加わったものがバックスイングの動作です。
バックスイングは一気に覚えるのではなく、分割してそれぞれの動きを反復練習するといいでしょう。①アドレスからクラブが8時の位置に来るまで ②8時の位置から9時の位置に来るまで ③腕が地面と水平の位置に来るまで④切り返しが起こるまで、という4つのパートで左右の腕、および体がどのように動くかを理解しながら実践することが大事です。
【書誌情報】
『100を切れない7つの理由・10の上達法 劇的に上手くなるスイングの作り方』
著者:阿河徹
なかなか上手くならないアマチュアゴルファーのスイングには、致命的な欠陥がある。そこで本書では、アマチュアのスイングの悪いクセを7つを解説。さらに、著者が「スイングの設計図」と呼ぶ、正しいスイングの動きをイラストでわかりやすく紹介する。そして、その基本の動きが身につき、上達に役立つ10のスイング・ドリルも公開する。スイングに悩んでいる人をはじめ、これからスイングを学ぶ人、基本を再度見直したい人も活用できる一冊である。
公開日:2021.09.12