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脳が衰えると認知症やアルツハイマー病に【図解 老化の話】

Text:長岡功 野村義宏

2060年には認知症有病率が33%に

「まず人の名を忘れ、次に顔を忘れる。それからチャックを上げるの忘れ、チャックを下げるのを忘れる」今は大谷翔平さんが、日本のみならずアメリカの野球ファンを虜にしていますが、そんな彼が生まれるズ~っと前にメジャーリーグの名マネージャーだったブランチ・リッキー(1881~1965年)が語った言葉だそうです(『すごい言葉』晴山陽一、文春新書 2004年)。

リッキーさんは元メジャーリーガーで、のちに監督や球団経営者となって勢力を注ぎましたが、マイナー組織の改革や初のアフリカ系選手ジャッキー・ロビンソンと契約を結んだことで野球史に名を残しました。そんなリッキーさんの残した言葉は、一聴大笑いですが、つらつら考えると人の脳が衰えることをジョークで表現したものでした。

「脳が衰える」・・・・・・なんと悲哀に満ちた言葉でしょう。ですが、私たちは老化していくことでいつか行く道なのかもしれません。中でも恐ろしいのは「認知症」。この病気には、大きく「アルツハイマー病」と「脳血管性認知症」があります。そして、かなりの確率で老化と関係しているようです。

「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」によると、2020年65歳以上の高齢者の認知症有病率は、下図のように16.7%、約602万人になっているそうです。なんと65歳以上の6人に1人が罹っていると推計したのです。しかも、その半数以上は「アルツハイマー病」だといいます。

私にも50代半ばでアルツハイマー病を発症した友人がいます。もともとカメラマンで、のちに東京の赤坂でビストロのような店を開きましたが、一品の値段がすべて500円でした。そんな値段でやっていけるのか、と危惧していたのですが、実はアルツハイマー病でお金の計算ができなくなっていた。だから、お釣りにも苦労しない500円に決めていたのです。

この病気は進行性の認知上で、脳にβアミロイドとタウ蛋白が沈着することで神経細胞が脱落していくといいます。原因がわかれば治療薬もできそうなものですが、そうはいかないのですね。現状では、初期進行を遅らせる薬はあっても、回復のための治療薬はないとのこと。ですが、根本治療薬の開発を目指して、研究者たちは日々挑戦しているといいます。一日も早く治療薬が開発されることを願うばかりです。いつか我が身も、と考えるだに身が細りますので。

認知症の推定人数と将来予測【眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話】

出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』監/長岡功 

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 老化の話』
長岡 功 総監修/ 野村 義宏 監修

高齢化や平均寿命が伸びた社会では、「老化」は誰もが避けられない、しかし誰もが可能な限り抗いたいテーマ。その多くは人体の「老化現象」、またそれに伴う「諸症状」として、完全には克服できないまでも、原因やしくみを知ってうまく対応すれば、症状を「やわらげる」ことや、日常生活での「影響を少なくする」こと、また「目立たなくする」ことが可能である。本書では具体的に、老化にともなう病気・諸症状の原因に言及し、その対処・対策法を解説、紹介する。中高年以降の健康と美容の悩みを楽しく読めて、一気に解決する一冊です。

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