台風の中での垣間見(野分)
中秋を迎えて六条院の庭に美しい秋の花々が咲く中、激しい野分(台風)が六条院を襲います。夕霧は、混乱する邸内で、偶然、紫の上を垣間見て、その美しさに驚愕し、強く心惹かれます。源氏は夕霧の落ち着かない様子から、紫の上が垣間見られたと知ります。源氏は、自分が藤壺と密通した経験から、夕霧には同じことをさせまいと、紫の上から遠ざけていましたが、台風のせいで近づけることになってしまったのです。翌朝、源氏が六条院の女性たちを見舞う際、夕霧は同行し、源氏が玉鬘に対して親代わりとは思えない親密な態度をとるのに驚きます。
玉鬘の宮仕えが決まる(行幸)
12月、大原野(おおはらの)への行幸があり、見物した玉鬘は、初めて父である内大臣の姿を見ます。兵部卿宮、髭黒の大将なども目にしました。そして、源氏と瓜二つの冷泉帝の美しさに感動し、かねて源氏から勧められていた尚侍としての宮仕えに、前向きな気持ちを抱くようになります。源氏は宮仕えに備えて玉鬘の裳着(もぎ)の準備をはじめました。玉鬘の身の上を明らかにする時期だと感じた源氏は、久々に内大臣に対面します。昔のように心を通じ合わせたのち、玉鬘が内大臣と夕顔の娘であることを告げました。内大臣は、信じがたい話だと涙を流し、一度は断った玉鬘の裳着の腰結(こしゆい)役を引き受けました。
腰結役・・・裳着の儀礼で腰結を結ぶ重要な役。「裳着」は女性の成人式で、結婚前に行う。
紫式部が愛した小塩山・大原野神社
現在の京都市西京区大原野の一帯は、平安時代に朝廷が狩猟を行う場所だった。藤原氏の氏神である春日大社から勧請(かんじょう)を受けた大原野神社が小塩山のふもとにあり、紫式部自身も氏神と崇め、和歌にも詠んでいる。
原文:ここにかく 日野の杉むら 埋(うづ)む雪 小塩(をしほ)の松に 今日やまがへる
訳:ここ越前の日野岳の杉林は、雪に深く埋もれんばかりだ。今日は、都でも小塩山の松に、雪がちらちらと散り乱れて降っていることであろうか。
鑑賞:父・藤原為時(ふじわらのためとき)に伴われて越前国にやってきた紫式部が故郷を懐かしみ詠んだもの。
出典:『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』高木 和子
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 源氏物語』
高木 和子 監修
平安時代に紫式部によって著された長編小説、日本古典文学の最高傑作といわれる『源氏物語』は、千年の時を超え、今でも読み継がれる大ベストセラー。光源氏、紫の上、桐壺、末摘花、薫の君、匂宮————古文の授業で興味を持った人も、慣れない古文と全54巻という大長編に途中挫折した人も多いはず。本書は、登場人物、巻ごとのあらすじ、ストーリーと名場面を中心に解説。平安時代当時の風俗や暮らし、衣装やアイテム、ものの考え方も紹介。また、理解を助けるための名シーンの原文と現代語訳も解説。『源氏物語』の魅力をまるごと図解した、初心者でもその内容と全体がすっきり楽しくわかる便利でお得な一冊!2024年NHK大河ドラマも作者・紫式部を描くことに決まり、話題、人気必至の名作を先取りして楽しめる。
公開日:2023.06.27