家庭環境を把握し、適切な関わり方を探る
家庭の 「今」 を理解することが対応のヒントに
気になる子の現状や課題を把握しようとするとき、その子だけを見るのでは不十分なことも少なくありません。その子が置かれた家庭の状況を知ることが、より適切な対応につながります。保護者との雑談や連絡帳の記載、家庭調査票などの情報源を基に、その子の生活をより広い視野で見ることを意識してみましょう。
特に、子どもの様子が急に変わったような場合は、家庭環境に何かしらの変化があることも少なくありません。保護者の転職や離婚、体調不良や入院、下の子の妊娠・出産などが背景にあるケースもあり、ぜひアンテナを張っておきたいところです。
また、注意したいのが貧困の問題です。近年では安価な衣類が出回っていることもあり、経済状況が外見には反映されづらくなっています。一見、そうは見えなくても、経済的な困難に直面している家庭が少なからず存在することを知っておきましょう。
保護者のタイプ別コミュニケーションの原則
一口に「気になる子の保護者」といっても、抱えている思いはさまざまです。日頃の接し方のポイントについて、保護者のタイプ別に把握しておきましょう。
子どもの言動を気にしすぎている タイプ
〈特徴〉
● 子どもの気になる言動を強く意識し、早く改善したいと思っている
● 育児に関する不安感が強く、何かと保育者に確認や相談をしてくる
〈対応のヒント〉
まずは保護者の話をしっかりと聞き、その頑張りを認めるような声かけを。「最近はいかがですか?」などと保育者からも積極的に働きかけ、園での様子などを共有していくといいでしょう。
子どもの気になる行動に気付いていない タイプ
わが子のマイナス面ばかりを一方的に伝えてくる保育者が、保護者の信頼を得られるでしょうか。気になる点だけを強調して話したり、家での様子を根掘り葉掘り聞いたりするような態度は避けたいもの。
まずは「楽しそうにしていた場面」「微笑ましかった瞬間」などを共有し、ニーズを引き出す方が優先です。
子どもの現状を受け入れられない タイプ
〈特徴〉
● 子どもの様子に違和感を覚えつつも、周囲の声に耳を傾けない
● 家族などから、自身の子育てについて責められた経験がある人も
〈対応のヒント〉
事態を改善しようと焦るよりも、まずはコミュニケーションを図り話しやすい存在になることを優先。じっくりと信頼関係を築き、保護者から話が出たタイミングで解決法を探れると理想的です。
【出典】『発達障害の専門家が教える 保育で役立つ気になる子のサポートBOOK』著:湯汲英史
【書籍情報】
『発達障害の専門家が教える 保育で役立つ気になる子のサポートBOOK』
著:湯汲英史
幼稚園や保育園で言葉や行動や少し「気になる子」はいませんか?落ち着きがない、ずっとボーっとしている、「わからない」が多く、会話が成り立たない、すぐウソをつく、他の子や保育者をベタベタ触る……など。そのような気になる行動や言葉を発する子どもたちのサポート法を多数の声かけ例とともに丁寧に解説。また、「気になる子」の周りの子どもたちにも焦点をあて、周りの子どもたちや親御さんへのフォローや対応策のほかにクラス全体が過ごしやすくなる環境づくりのアイデアを提案します。そのほか、園でのスムーズな連携の仕方や有効的な記録の取り方など、今すぐ実践したい保育で役立つ情報を豊富に収録。保育学生さんや新米保育士さんだけでなく、改めて「気になる子」のサポートについて考えたいベテラン保育士さんなど多くの方にぜひ手に取っていただきたい一冊です。
公開日:2024.06.29