不調の原因となる三因
気血水や五臓六腑の機能がバランスを崩すと、何らかの不調が起きやすくなります。そのバランスを崩す病因には外因、内因、不内外因があり、その3つを三因といいます。
体の外から侵入する外因
外因とは外部から体を襲って病気を引き起こす、自然界にもともと存在する邪気のことで、外邪とも呼ばれています。風邪、寒邪、暑邪、湿邪、燥邪、火邪の六種類があり、これを六淫といいます。
風邪
風の邪気が体表部から体内に侵入しようとして、おもに上半身を犯し、発熱や発汗、頭痛や鼻汁、のどの痛みなどを生じます。また遊走性の痛みやかゆみがあらわれます。風邪は、風寒、風湿、風熱など、ほかの邪気と合併しやすいのが特徴です。
寒邪
冬や冷房の寒さが体内の機能の活動を衰えさせます。気や血の巡りを悪くし、発汗を滞らせて筋肉をかたくします。
暑邪
夏の暑さが水分代謝を乱し、口渇、多汗、高熱などの症状があらわれます。湿をともない、湿邪も併発しやすくなります。
湿邪
梅雨時や雨天時に湿度が上がることにより、体にも湿が多くなり、体や頭が重だるくなります。めまいや関節痛も起きやすくなります。湿邪は脾胃を侵しやすく、消化機能の低下や食欲不振を起こしやすくします。また湿邪によって水分代謝が滞った状態を水毒、さらにしつこくよどんだ状態を痰飲といいます。
燥邪
空気の乾燥は、特に肺を侵します。せき、のどの痛み、鼻のかわきがあらわれ、皮膚も乾燥によってかゆみを生じます。
火邪
熱邪ともいい、津液を消耗させ、高熱や口渇など熱性の症状があらわれます。炎症を起こしやすく、精神の異常の原因にも。
感情が不調を招く内因
内因とは体の内側にある感情が病因となるもので、内邪とも呼ばれます。喜、怒、憂、悲、思、恐、驚という7種類の感情(七情)に分けられ、それぞれ五臓に影響をおよぼし病気を引き起こします。これを内傷七情といいます。
過度の喜は心を傷めて動悸やあせり、不眠を、過度の怒は肝を傷めて頭痛や目の充血を、憂と悲は肺を傷めてせきや息切れを、過度の思(思い悩み)は脾を傷めて食欲不振や胃のつかえを、恐と驚は腎を傷めて記憶力低下や抜け毛などを起こすと考えられています。
日常生活で気をつけたい不内外因
外因と内因以外の病因を不内外因といい、飲食失調、労倦、房事不節、外傷、寄生虫などがあります。
飲食失調とは、冷たいものや脂っこいものの食べすぎ、暴飲暴食などで、胃や脾の機能に傷害を起こす食の不摂生のことです。また、労倦は労働のしすぎで、過労により心神を損ないます。房事不節は節度のない性行為で、病因となります。
【出典】『生薬と漢方薬の事典』著:田中耕一郎
【書誌情報】
『生薬と漢方薬の辞典』
著:田中耕一郎/ 監修:奈良和彦・千葉浩輝
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公開日:2024.12.08