車と飛行機、何が違う? ジェットエンジン始動の秘密【眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話】


エンジン・スタートの準備
自立するには助けが必要
ジェット・エンジンの概略がわかったところで、次はエンジンを回す仕組みです。
自動車のエンジンの場合も、自分一人の力でいきなり燃料を入れ、ゼロからスタートすることはできません。独り立ちできるまで、スターターと呼ばれる装置の手助けが必要です。それでもキーを差し込んで回せば、わずか2〜3秒間で自立、つまりアイドリング(緩速運転)状態になります。
しかしジェット・エンジンの場合は、2〜3秒間でエンジン・スタート完了、というわけにはいきません。そもそもジェット旅客機には、エンジンをスタートするためのキーがありません。
そよ風が吹くと「カラカラカラ」と気軽に回転しているエンジンを見ていると、簡単にスタートできるように思えます。
しかし、ジェット・エンジンをゼロから回転させるには、大きな力が必要です。そのため自動車のような電動スターターではなく、ニューマチック・スターターと呼ばれるものでエンジンが自立するまで手助けしてもらいます。
ニューマチックとは、「空気の作用による」という意味で、圧縮空気を利用したタービンで駆動するスターターです。
タービンを回転させる空気は、周囲にいくらでもあり、何よりも小型軽量にもかかわらず大きな力を発揮するため、飛行機にとっては便利な「空気の利用」と言えるでしょう。
なお、ボーイング787は、VFSG(バリアブル・フリークエンシー・スターター・ゼネレーター)と呼ばれる発電機と、スターターの両方の機能を持つ装置によってエンジンをスタートしています。
ニューマティック・スターター


【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』著:中村 寛治
【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 飛行機の話』
著:中村 寛治
「飛行機はなぜ、どうやって空を飛べるのか」という基本から、最新の知識、身近な航空雑学まで、飛行機の魅力をたっぷり図解でわかりやすく教える一冊。
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