実はサケは白身魚!ピンク身になるメカニズムとは!?【眠れなくなるほど面白い 図解 魚の話】

エビを食べると赤くなる?

サケといえば、「サーモンピンク」とも呼ばれるオレンジがかったピンクの身が特徴的。赤身か白身かでいえば「赤身魚?」と思いきや、実はサケは白身魚です。ピンクの身の色のワケは、食べているエサにあります。

サケ(シロザケ)はアユと同様、海と河を行き来する「両側回遊」を行う回遊魚です。河で生まれたばかりのサケの身はほぼ白。しかし、成長して海に出ると、エビやオキアミなどの甲殻類をたくさん食べるようになります。これらのエサに含まれる「アスタキサンチン」という赤い色素が筋肉に蓄積され、身がピンクに変わるのです。

ただし、アスタキサンチンの役割は、ただ身を染めることだけではありません。サケは海に出た後、長ければ数千kmもの距離を回遊します。さらに、産卵のために河をさかのぼる(遡上する)際には、ホルモンの影響でエサを食べなくなり、蓄えたエネルギーを使って急流を遡上していきます。この過酷な運動によって「活性酸素」が体内に発生しますが、これは細胞を傷つけ、サケの体力を奪うもの。アスタキサンチンには、これを抑える強い抗酸化作用があるのです。

繁殖のためにエネルギーを使い果たした後、その生涯を終えるサケにとって、ピンクは、命懸けの旅を戦うための色でもあるのです。

海での食事がサケの身をピンクに染める

河を遡上中にアスタキサンチンが筋肉から皮膚へ移動し、体表面は赤などの混じった「婚姻色」になる。代わりに、身の色は白っぽくなることがある。

海に出て、赤い色素「アスタキサンチン」を含むエビなどを食べるようになると、身がピンクに変化する。

赤身魚か白身魚かを決めるのは「色素たんぱく質」の量

マグロ

赤身魚の代表であるマグロは、時速60~80km で海を泳ぎ続ける。そのために必要な筋肉への酸素供給に役立つ、赤色の色素たんぱく質である「ミオグロビン」が多く、身が赤い。

サケ

白身魚であるサケは、長距離を回遊するものの高速で泳ぎ続けるわけではなく、色素たんぱく質は少ない。一方、絶食での遡上に耐えるため、抗酸化作用のあるアスタキサンチンが重要となる。

【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 魚の話』監修:さかなのおにいさん かわちゃん

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『眠れなくなるほど面白い 図解 魚の話』
監修:さかなのおにいさん かわちゃん

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