『伝授』第15回 今夏に印象に残っている馬&凱旋門賞や海外遠征に関しての考察


今回は俺が今年の北海道滞在中で印象に残っているレースや、今後活躍しそうな馬の話題を中心に書いてみたいと思う。
また楽しみにしている方が多いであろう、10月5日に行われる凱旋門賞に関係することについても個人的な思いを少し書いてみようと思う。
・函館2歳ステークスは騎手のペース判断が大きく結果に影響した
今年の北海道開催で俺が唯一印象に残っているレースは函館2歳ステークス。単勝4,870円の9番人気馬が勝ったわけだが、あれこそ騎手の判断が大きく結果に結びついたレースだったのではないだろうか。
一般的に1200mはスタートしてから2ハロン目が一番速く、ある程度トップスピードまで持って行った後に、3ハロン目あたりでみんな一度息を入れる。
馬はだいたい800mくらいは息継ぎをしないで走れるけど、だいたい3ハロン目で隊列ができて先頭に行った馬が一息入れるから、それに伴って後ろの馬たちもペースダウンする。そのラップスピードが、ジョッキーたちの体に埋め込まれていると思っている。
だけど、函館2歳ステークスは超レアケースだった。キングが乗ったホッカイドウ競馬から転入初戦のエイシンディードは、スタートするとハナに立って行った。
3ハロン目に差し掛かると、2番手以降のジョッキーたちは、先頭に立った馬もペースを落とすと思ってペースダウンした。

ところが、キングは流れがドスローだったので、ペースを落とすことなく同じペースで走った。そのため3~4コーナーで決定的な差が出てしまい、人気薄の逃げ切りを許す形となってしまった。しかも、2・3番手にいたのは①②番人気の馬だった。
キングもペースが速ければ、他の騎手と同じように一旦スピードを落としていたと思うけど、ドスローだったから特に落とす必要もなく、馬に無理のないペースで走ってきたに過ぎない。
日本人騎手たちはみんな今まで1200mはそういうラップで走ってきたから、今回もそうなるだろうと思い込んでいたために人気薄の馬が勝った重賞だったと俺は思っている。
・夏の北海道で見たショウナンガルフ&マルガは先が大きく期待できる
昔は夏場から使いだすような馬はその後あまり期待できなかったけど、最近は北海道でも良い馬をおろすという流れになってきている。
札幌2歳ステークスを勝ったショウナンガルフは、まだまだ奥がある。稽古は緩くて「これで走るのかよ」と思った。
だけど馬はすごく良いし、追い切りから跨った池添騎手に聞いても「ギアが相当ある」と言っていた。装鞍所でもパドックでもかなりやんちゃなところを見せていたけど、強いことは間違いない。

レースもジョッキーが自信を持って乗っていた。4コーナー手前まで前の馬とだいぶ離れているのに後方で構えていて動かない。それで直線だけ外に出して間に合わせたからね。
ちなみにショウナンガルフを使う週の木曜日に、須貝調教師とメシを食べに行った。その時に「マルガについてどう思う?」と聞かれたから、「全然レベルが違うな」と答えた。すると、師も「(半姉の)ソダシより格段に上だよね」と言った。マルガも活躍する馬に違いない。

・凱旋門賞など日本馬が海外レースを使うことについて
今年はアロヒアリイ、ビザンチンドリーム、クロワデュノールの3頭が前哨戦を勝った。だけど、俺は基本的に普段見ていない馬が出走する海外競馬には興味がないし、前哨戦のカテゴリーが凱旋門賞と直結するようなレースなのかわからない。だけど、挑戦する限り勝つ可能性はもちろんあるんじゃないかな。
凱旋門賞でもどこでも、馬はオーナーが使いたいところを使いに行けばいい。一方で外国の競馬に行くことは、良い馬が海外に行ってしまい日本で走らないという点で、日本の競馬にとっては大ダメージなのも事実。
世界各国で、それが影響して馬券の売り上げが下がっているという問題があり、主催者としては他国に馬を出したくないというのは本音。だけど、競馬にも国際化の波があるし、オーナーサイドは海外のレースで勝ちたいと馬に夢を持っているので誰にも止められない。
海外競馬の馬券が日本で何十億円売れたとしても、向こうに払うお金&掛かる経費を差っ引けば、ほとんどJRAにとってプラスにならない。日本でその馬たちが走れば売り上げが伸びるレベルの馬だし、強い馬が全て日本で走る方がレースとして面白いと個人的には思う。
国内でもダービー馬が菊花賞を使わないのが、当たり前になってしまった。菊花賞の価値が微妙になっているから、強い3歳は外国に行かなくても天皇賞(秋)に向かう。種牡馬になった時に3000mを勝っている実績があっても、その距離のレースがなかなかないし、それよりは天皇賞(秋)を勝った方が種牡馬としての価値が出るからね。
まあ、個人的には競馬なんて買いたい馬が馬券に来てくれればいいだけの話だよ(笑)。